危険すぎる恋に、落ちてしまいました。番外編2

キッチンに入ってきた椿は、
美羽の手を取る秋人を見て、目を細めた。

不機嫌オーラが、空気を刺す。

「おい」

「夫の前で堂々と不倫か?秋人」

「ち、違う違う!!」

美羽は慌てて叫ぶ。

「指切っちゃって!秋人くんが手当てしてくれてただけだよ!」

秋人は苦笑いして、余裕の笑み。

「やだなぁ。久しぶりに会ったのにひどい言い方するね、椿」

椿はじとっと美羽を見てため息をついていた。

「……はぁ。こーなるから、もっと呼べって言ったんだ」

「え!?そこ!?」

美羽はツッコむ。

「呼べって何!?誰を!?どういう理屈!?」

椿が言い返そうとした、その時――

「私たちもいるよ〜ん!」

莉子が突然、椿の背後から顔を出した。

「うわっ!?」

椿が本気で驚く。

「なんだ、お前らもいたのか……!」

「おじゃましまーす」

遼がさらっと手を振る。

椿はリビングを見渡し――
ソファで爆睡している悠真を見つけ、そしてまた盛大にため息をつく。

「……悠真は、人ん家でなんで寝てんだよ」

美羽は笑って肩をすくめる。

「だって倒れそうって限界だったんだもん」

「まぁ椿くんも、ちょっとは優しくしてあげて?」

椿は小さく舌打ちをして――
でも、タオルケットがちゃんとかかっているのを見て、
ほんの一瞬だけ目が柔らかくなった。
……のに。

すぐに秋人へ戻る。

「秋人」

「お前は距離感、間違えんなよ」

秋人は笑って返す。

「はは、相変わらず過保護だね、椿?」

「うるせぇ」

莉子がきゃっきゃする。
その横で遼も、ニヤニヤしている。

「え、なにそれ新婚っぽい!!」

「椿くん、嫉妬かわいいね〜!」

「うるせぇ!」
美羽は顔を真っ赤にして叫んだ。

「莉子ぉぉ!!やめてってばぁ!!」

ソファの悠真が、むにゃむにゃと寝言でぼそっと呟く。

「……美羽ちゃん……天使……」

「こいつ殴っていい?」

椿のこめかみに怒りマークが浮き出る。

「「「やめなって~!!」」」



家の中に笑い声が弾けて、

キッチンの鍋からは、カレーのいい匂いが立ち上った。
冬の終わりの夜。
あたたかい灯り。

騒がしくて、やかましくて――
でも、それが美羽にとって“いちばん幸せな日常”だった。

椿は不機嫌そうに言う。

「……で、俺の飯は?」

美羽はにこっと笑う。

「もちろんあるよ、椿くん!」

「今日はみんなで食べよ?」

椿はふいっと顔をそらして、ぼそっと言った。

「……当たり前だろ」

その耳が、少しだけ赤いことに気づいて、
美羽は胸の奥がふわっとあたたかくなった。