運命の出会いって君は言うかな

ぶっちゃけ、第一印象は
「(うわっ芋っぽい、童貞かよ)」
だった。

ママから言われていた3人組は、野球選手だと言っていた。
1人は30代半ばくらいのベテランっぽいママの知り合い。
1人は20代前半くらいの見るからにチャラそうで要領だけは良さそうな若い男の人。
1人は、20代半ばくらいの八の字眉毛で両脇を前の2人にホールドされた男の人。

見るからにその人の失恋慰め会みたいだったけど、野球選手なんだからどうせこの人もチャラいんだなんて思いながら席についた。
ここに来る前に1軒目に行ってたらしいけど、彼の酔い方は割と良くない顔色の酔い方だった。
きっと、ベテランっぽい人の手前、ボトルのお酒を断れないのだろう。
そういう人、いるよね。

だから隣のベテランさんに聞こえないように耳元で言ってあげたのに、顔は真っ赤になるし、そのせいでバレそうになるし、それにそこから圧倒的に口数が少なくなった。

…おや?もしかして、これは、本物の童貞さんなのでは…?
このまま、この人も取り込めたら太客になりそうだ。
プロ野球選手なんて金くらい余るほど持ってるでしょ。
色管は得意だ。
特にこの類の男の人については。
だから、これはチャンスだ。
ちゃんとここで次に繋がるように手綱を引かなくちゃ。
と思ってたら…

彼に連絡先の交換を言われることもなく、ただただ時間だけが過ぎていき、本当に“楽しくおしゃべり”する時間になっていた。
最後に私から連絡先を聞こうとしても、既にもう大分酔っ払ってる彼は歩くのもしんどそうで、泣く泣く今回は諦めた。
でも、話のつかみは良さそうだったし、いける。
次回もすぐ来てくれるはず。
と確信していた。

それなのに…

ユ「全っ然来ないじゃない」

ミレイちゃんには彼と一緒に来ていたチャラ男はべったりなのに、彼は全然来ない。
くそ、今回は諦めるか…空振りなのは腑に落ちないけど、まぁいいや。もうすぐ出勤時間だ。

今日も私は嘘をつく。
綺麗なドレスで身体を隠し、濃いメイクで素顔を隠し、薄っぺらい言葉で心を隠し、客に、自分に、嘘をつく。
それが1番安心できる戦い方。
私が弱いことを忘れさせてくれる私だけの魔法。

ユ「いらっしゃいませー!」

笑顔なんて慣れてる。
当たり前のように自然な笑顔が作れる。
思ってもないような綺麗な言葉がポンポン出てくる。
き汚らしいおじさんにも平気でボディタッチできる。
下ネタを言われても、素肌を触られても、笑顔は貼り付けられる。
それが私、“撫子ユズ”なんだから。

「ユズちゃんの笑顔は可愛いねぇ」
「ユズちゃんがそう言ってくれるのが嬉しいよ」
「ユズちゃんにまた会いに来るね」
みんな、騙されてくれる。
みんな、私のために湯水のようにお金を落としていく。
みんな、まるで幸せかのように。

ユ「またねーー!待ってるよー!」

最後のお客さんを見送って、貼り付けた笑顔を残したまま、CLOSEの看板を掛けた。