色褪せて、着色して。~黒薔薇編~

「おい、あるじ! 外に変なジジイがいるぞ!」
「言葉遣い!!!!!」
 ノックもなしに部屋に入ってきたかと思えば。
 ハガネが大声で言った。
「俺様が護衛している側で、良い度胸だ! 捕まえてやる!!!」
「ちょっと、お客様かもしれないでしょ。乱暴はやめなさい」
「おい、ジジイ!」
 ハガネは人の忠告に耳を貸さず飛び出していく。
 ああ…。
 頭が痛い。
 スズメがこっちを見てペコリと頭を下げて外に出て行く。
 私は鍵盤から手を放した。

「ジジイ!」
 家中に響き渡る声でハガネが言った。
 本当にハガネは乱暴すぎる。
 首根っこをハガネに掴まれてやって来たのは。
 サンタクロースのような白髪に立派な髭がある老人だった。
「私は決して怪しい者じゃありませぬ」
「じゃあ、何でさっさと訪問しねえんだよ。家の周りをうろうろしやがって」
「それは・・・」
 と言って老人はちらっと私を見た。
 ベール越しに目が合うと。
 老人は頭を下げた。
「スペンサー伯爵様からの紹介状も持っています。私の履歴書もあります」
「…もしかして」
 立ち上がると。
 老人が持っている工具カバンが目に入った。
「調律師さんですか?」
「はい。その通りです」
 脅えた目で老人が私を見ている。
 私は構わず、老人の手を引っ張って握った。
「是非とも、手ほどきをお願いします!!」