色褪せて、着色して。~黒薔薇編~

 自己紹介をするとしたら、実に長い。
 私の名前は、セシル・マルティネス・・・じゃなくて、
 結婚したので、セシル・マルティネス・カッチャー。
 未だに自分の名前に慣れない。
 今、自分が住んでいるティルレット王国では、身分の高い者は本名を明かさない決まりがある。
 常に呼び名、あだ名で通っているので。
 私の本名を知るのは、ほとんどいないと思う。

 悪役令嬢と決めつけられ、祖国にいられなくなった私は。
 幼なじみで王族であるテイリーに助けられ。
 この国で生活することになった。
 まあ、この国に来てから。
 本当に色んなことがあって。
 ありすぎて…最終的に。
 私は国家騎士の太陽様というゴリゴリマッチョの人と結婚して。
 国王の寵姫という立場で。
 王家の領地で暮らしている。

 国王の寵姫で人妻…という情報量の多すぎる肩書だけど。
 そこは、もう上手く飲み込んでほしい。

 王家の領地内には3つの小さな村があり。
 その村の一つにある一軒家で。
 私は、侍女のバニラと暮らしている。
 私の護衛は2人いて。
 一人は元罪人のトペニ。
 もう一人はスズメという、いたく真面目な男だ。
 トペニとスズメは国家騎士の寮から通ってきてくれている。
 尚、愛のない結婚をした私の夫、太陽様も普段は寮で暮らしている。
 …ただ、太陽様は一年中ほぼ海外や国中を駆け巡って仕事をしているので。
 ほぼ、いない。
 いない上に顔を見合わせることがない。
 本当に形だけの結婚といって良いんだと思う。