時を縫う英雄譚

暗闇。
時空の裂け目の中。

世界の断片だけが浮かんでいる。

崩れた街。

壊れた時間。

砕けた未来。

訪れるはずだった、未来の地球。


その断片的な記憶の中心で、フォールが針を振るう。


「ったく……」


糸を通す。

空間を縫う。

時間を固定する。

裂け目が暴れる。

巨大な虚影が現れる。

それを祓い、縫い止める。

その繰り返し。


フォールは笑った。


「次は世界が相手か」

針を構える。

「思ったより悪くねぇな。
 勝てば世界の英雄だ」


針が閃く。
赤い糸が、崩壊する空間を縫い止める。

だが。
裂け目は、完全には閉じない。

フォールは息を吐く。


「んー、やっぱり一人じゃキツいか」


それでも。
最後の一針を構えた。


「……まぁいい」


小さく呟く。


「せめて、兄として、弟の未来くらい守らせろよ」


針が落ちる。

光が響也を包み込み、爆発した。