港湾地区。
夜の海が不気味なほど静かだった。
透とフォールは、崩れかけた防波堤の上に立っている。
芽吹は後方で街を守っていた。
空の一点が、歪んでいる。
「……来るぞ」
フォールが小さく言う。
次の瞬間。
空が裂けた。
激しい閃光。
まるで、隕石同士がぶつかったみたいだった。
針が交わり、時間が反転する。
過去と未来が混ざり合い、空間が歪む。
――無理やり灯を引き剥がそうとした代償。
世界が崩れていく。
透は裂け目の前で立ち尽くしていた。
裂け目の奥に、少女の影が揺れる。
「灯が……そこに……」
透は針を構えた。
「スティッチ・ゼロ!」
時間が凍る。
だが。
裂け目だけは、止まらない。
「……なんで…なんでなんで…!!」
透の声が震える。
「止まらねぇ!!」
フォールが、透の小刻みに震える肩に手を置いた。
「なぁ、クロノス」
透が振り向く。
フォールは、いつもの調子で笑った。
「俺たち、ずっと観測者だったよな」
「……どうしたんだよ、急に」
「他人の時間を見て、修復して」
一拍。
「でも今くらい
自分の時間を選んでもバチは当たらないよな」
透の瞳が揺れる。
その瞬間。
フォールがハンカチを取り出し、透の鼻と口を塞ぐ。
「――ッ!」
甘い匂いがして、争うこともできず、透の意識が途切れる。
フォールが体を受け止めた。
「ごめんな、透」
苦笑する。
「お前は絶対止めるから」
駆けつけた芽吹が、透の方を支える。
「透!」
フォールは裂け目を見ていた。
空間が崩壊している。
静かに言った。
「この裂け目、誰かが縫い止めなきゃならねぇ」
嫌な予感がして、芽吹が顔を上げる。
「……フォール?」
フォールは透を芽吹に預けた。
「透を頼む。お前はコイツを見てろ」
芽吹は思わず彼の腕を掴んだ。
「待って」
声が震える。
「それって、あなたはどうなるの?」
フォールは少しだけ困った顔をした。
「戻れないんじゃない?しらんけど」
芽吹の指に力が入る。
「だったら行かせない」
その目は公安のヴァインだった。
「これは命令よ」
フォールは笑った。
「珍しいな」
そっと腕をほどく。
「そういや、一応上司だっけ」
そして針を構えた。
赤い糸が、夜の中で光る。
「透が“零番”なら」
裂け目へ歩く。
「俺は“終番”だろ?」
フォールは芽吹の手を優しく、でも強く振り払う。
芽吹が必死に叫ぶ。
「フォール!だめ、もどって!!」
だけど、芽吹の叫びは虚しくとも、届かず、彼は振り向かなかった。
そして。
裂け目の中へ消えた。
夜の海が不気味なほど静かだった。
透とフォールは、崩れかけた防波堤の上に立っている。
芽吹は後方で街を守っていた。
空の一点が、歪んでいる。
「……来るぞ」
フォールが小さく言う。
次の瞬間。
空が裂けた。
激しい閃光。
まるで、隕石同士がぶつかったみたいだった。
針が交わり、時間が反転する。
過去と未来が混ざり合い、空間が歪む。
――無理やり灯を引き剥がそうとした代償。
世界が崩れていく。
透は裂け目の前で立ち尽くしていた。
裂け目の奥に、少女の影が揺れる。
「灯が……そこに……」
透は針を構えた。
「スティッチ・ゼロ!」
時間が凍る。
だが。
裂け目だけは、止まらない。
「……なんで…なんでなんで…!!」
透の声が震える。
「止まらねぇ!!」
フォールが、透の小刻みに震える肩に手を置いた。
「なぁ、クロノス」
透が振り向く。
フォールは、いつもの調子で笑った。
「俺たち、ずっと観測者だったよな」
「……どうしたんだよ、急に」
「他人の時間を見て、修復して」
一拍。
「でも今くらい
自分の時間を選んでもバチは当たらないよな」
透の瞳が揺れる。
その瞬間。
フォールがハンカチを取り出し、透の鼻と口を塞ぐ。
「――ッ!」
甘い匂いがして、争うこともできず、透の意識が途切れる。
フォールが体を受け止めた。
「ごめんな、透」
苦笑する。
「お前は絶対止めるから」
駆けつけた芽吹が、透の方を支える。
「透!」
フォールは裂け目を見ていた。
空間が崩壊している。
静かに言った。
「この裂け目、誰かが縫い止めなきゃならねぇ」
嫌な予感がして、芽吹が顔を上げる。
「……フォール?」
フォールは透を芽吹に預けた。
「透を頼む。お前はコイツを見てろ」
芽吹は思わず彼の腕を掴んだ。
「待って」
声が震える。
「それって、あなたはどうなるの?」
フォールは少しだけ困った顔をした。
「戻れないんじゃない?しらんけど」
芽吹の指に力が入る。
「だったら行かせない」
その目は公安のヴァインだった。
「これは命令よ」
フォールは笑った。
「珍しいな」
そっと腕をほどく。
「そういや、一応上司だっけ」
そして針を構えた。
赤い糸が、夜の中で光る。
「透が“零番”なら」
裂け目へ歩く。
「俺は“終番”だろ?」
フォールは芽吹の手を優しく、でも強く振り払う。
芽吹が必死に叫ぶ。
「フォール!だめ、もどって!!」
だけど、芽吹の叫びは虚しくとも、届かず、彼は振り向かなかった。
そして。
裂け目の中へ消えた。



