朝のホームルーム。
出席簿をめくる音が、やけに大きく響いていた。
「……じゃあ、次。佐伯――」
担任が一瞬、言葉に詰まる。
黒板の前で、名前をなぞる指が止まった。
「……佐伯、えーと……」
教室が静まる。
「せんせー、そんな奴いないっすよ!」
「……あれ、寝ぼけてんのかなぁ」
ゲラゲラと笑い声が響く。
担任はそう言って、何事もなかったように後頭部を掻きながら歩き出す。
その瞬間だった。
(……違う)
一ノ瀬透は、胸の奥に引っかかる感覚を覚えた。
(“空席”じゃない)
机の列。
窓際、後ろから二番目。
――そこは、誰かが座っていた場所だ。
佐伯、だっけ。
視線を落とすと、
その席の机だけ、やけに綺麗だった。
傷も、落書きも、消しカス欠片ひとつない。
(……こんなに静かだったか?)
透は無意識に、指先で自分のノートをなぞる。
ページの端に、小さな走り書きがあった。
『佐伯 幸介』
自分の字だ。
だが、思い出せない。
誰だ。
佐伯って。
出席簿をめくる音が、やけに大きく響いていた。
「……じゃあ、次。佐伯――」
担任が一瞬、言葉に詰まる。
黒板の前で、名前をなぞる指が止まった。
「……佐伯、えーと……」
教室が静まる。
「せんせー、そんな奴いないっすよ!」
「……あれ、寝ぼけてんのかなぁ」
ゲラゲラと笑い声が響く。
担任はそう言って、何事もなかったように後頭部を掻きながら歩き出す。
その瞬間だった。
(……違う)
一ノ瀬透は、胸の奥に引っかかる感覚を覚えた。
(“空席”じゃない)
机の列。
窓際、後ろから二番目。
――そこは、誰かが座っていた場所だ。
佐伯、だっけ。
視線を落とすと、
その席の机だけ、やけに綺麗だった。
傷も、落書きも、消しカス欠片ひとつない。
(……こんなに静かだったか?)
透は無意識に、指先で自分のノートをなぞる。
ページの端に、小さな走り書きがあった。
『佐伯 幸介』
自分の字だ。
だが、思い出せない。
誰だ。
佐伯って。



