跳べない君と、はねない私

西高の生徒たちで貸し切ったバスの中。
空気は少し高揚していた。

女子たちの笑い声と、ふざけている男子たちの声。
無論、大騒ぎというわけではなくざわざわと聞こえる程度。

俺は、それから逃げるように世界史の参考書を開いていた。

こういうのは、疲れる。

「翼」

思った矢先に隣に座る友木から声をかけられる。

「よく、車酔いしないよな」

こちらも遠慮なく無視をする。

「窓際陣取ってるくせに、ちょっとは景色見ろよー」

バスは山の中にある宿泊施設に向かっている。
わざわざ見ずとも、外が青々としていることは容易に想像できる。


「まだ怒ってんのー?」

「は?なんで?」

あまりのしつこさに言い返してしまった。

「こわ!」

友木は大袈裟にのけぞった。

勢いで睨んでしまい、こいつの思う壺だったと後になって気づく。

「図星かよー」

友木は、苦笑いを浮かべる。

「別に、どうでもいい」

吐き捨てるようにいった。

自分がダサいことは重々承知している。

だが、この苛立ちを隠せるほど大人じゃなかった。


いつも以上に、気が立っているのには理由があった。

それは、友木が発端だ。