跳べない君と、はねない私

──ガラ。

ドアを開く音が、二人の沈黙を破った。

二人とも同時に、出入口に視線を向ける。

出入口で、友木くんが目を丸くして立ち尽くしている。

「えっと……なんか邪魔した?」

絶対に、あらぬ誤解をしている。

「違う! 違うの!」

そう否定しながら、違うってなにが違うんだろう……。

と、我ながらフォローの下手さに呆れる。

「はぁ……」

翼くんは短くため息をつく。

「え? 大丈夫? 翼になんかされた……わけじゃないよね」

友木くんは恐る恐る教室に入ってくる。

「さ、されてない!」

「してない!」

翼くんと声が重なる。

翼くんは、それに苛立ったのか、さらにため息をついた。

なんにせよ、空気が悪すぎる。



「これ、返しにきて……」

友木くんに、持っていた紙袋を渡す。

「あ、昨日の」

「うん。昨日はほんとにありがとう」

自然と早口になってしまう。

「えっと……。じゃあ、帰ります」

まるで用事があるみたいに、わざと教室の時計を見る。

「うん。気をつけてな」

友木くんは、納得いかなそうな顔をしてるけど、そそくさと教室を出た。




心臓が嫌な音を立てて、体に響いている。


どうしよう。

ほんとに、最悪だ。


翼くんに完全に不信感を持たれている。


現実があまりにも、厳しすぎる。

推しが知らない間に、スケートをやめてて。
しかも、その推しにめちゃくちゃ嫌われて。

ここ、数日間でこんなに不幸が濃いことある?


でも、よかったと無理やり思うようにしよう。


苦し紛れすぎるけど、これでほんとに勉強だけに集中できる…。