跳べない君と、はねない私

心の整理がつかない。

そう、私が思ったところで淡々と時間は流れていく。

授業も全く頭に入ってこなかった。

ほんとんど、処理落ちみたいだ。




──なんで、スケート辞めたんだろう。

当然浮かんだ、そんな疑問もその日のうちに回収されてしまった。

4限目の体育。

50mのタイム測定で、翼くんは見学した。


グラウンドで男女別れて番号順になる中、翼くんはひとり近くのベンチへ座っていた。


ケガ…。

今まで、日常生活では気づかなかった。

氷の上でスピードを出したうえで、高く跳びあがるのが必須とされてる競技。
当たり前に、ケガのリスクはついてまわる。

翼くんは昨シーズンから、4回転をプログラムに組み込んでいた。
成功率はあまり高いと言えず、苦しんでいたように思う。

何度か痛そうな転倒を見たことがある。


そのたびに、立ち上がるまでの数秒が、怖かった。

それでも、翼くんはいつも何事もなかったみたいに立ち上がっていた。

私はそんな姿しか知らない。


翼くんは、つまらなそうに男子の走者をながめていた。

その姿を見ていると、押し潰されるように胸が痛んだ。