疎まれ令嬢の一途な政略婚

「俺はこの話を進めたいと考えています。もちろん伊千夜(いちよ)さんには断る権利がありますから、無理強いするつもりはありませんが……」
「ええ、分かっています」

 瀬戸口(せとぐち)さんはそう言ってくれるけれど、実際に断るかどうかを決めるのは私じゃない。この状況で自分がそれについて、ハッキリとした答えを出すことは許されてないから。
 けれど目の前に座っているこの人は、真剣に私と向き合ってくれてるように感じた。

「俺にとって、この見合い話には大きなメリットがあります。それは個人的なものではなく……俺が経営する会社や自分の親族にとって、という意味になりますが」

 つまり瀬戸口さんは、私という人間を自分の妻に迎えたいのではなく。古城(ふるしろ)の家との深い繋がりを手にするために、あの家の血縁者と婚姻を結びたいという事なのでしょうね。
 それは当然だと思う。だって私自身には、それ以外に何の価値もないのだから。むしろそれをハッキリと伝えてくれたことに、彼の誠実さを感じたくらいで。

「……ではもしも私が瀬戸口さんに嫁いだ場合、自分はどのような立場になるのでしょうか?」

 あの家で暮らすことによって家政婦や下働きのような扱いには慣れているが、それでも不安が無いわけじゃない。出来ることなら、自分の置かれるであろう状況は早めに知っておきたくて。

「伊千夜さんに対して、酷い事をしたりはしないと約束する。それでも……君を形だけの妻にしてしまう事になるが、俺との結婚に合意してもらえるだろうか?」