疎まれ令嬢の一途な政略婚

 もしもこの男性が自分を妻に望んだ場合、その返事は私ではなく兄によって決められるに違いない。
 目の前に座っている瀬戸口(せとぐち)さんが、そんなに悪い人に見えるわけではないけれど……こんな自分の人生に大きく関わることであっても、私の気持ちなどお構いなしで進められてしまうから。
 ずっと前からこうなる事は覚悟はしていたし、自分が置かれる場所が変わるだけで今まで通り心を閉ざして生きていればいいだけ。そのつもりで、この見合いに挑んだつもりだったのに。

「先ほども話したように君の兄と俺は学生時代に知り合って、今も仕事関係で大きな関わりがあるんだ。今回の伊千夜(いちよ)さんとの見合い話も、仕事に関わる【ある条件】の代わりとして俺の方から提案したことで」
「条件の代わり、ですか……」

 もちろんその内容を私は知らない。きっと兄や古城(ふるしろ)の家にとっては大きなメリットのあることに違いないけれど、私はその『代わり』として差し出される程度の存在なんだなって。
 分かってはいたことだけど、こうして再認識させられるのは少しだけ辛くもある。それが顔に出ていたのか、瀬戸口さんはこれの続きを話すかを迷っているようだった。

「続きをどうぞ。全て聞かせてもらっていた方が、私も助かりますので」
「そうですか……正直なところ、浩晴(ひろはる)がこの見合い話を承諾するとは思ってなかったんです。だから今回は予想外の事で、伊千夜さんを巻き込んでしまう形になってしまった」

 普通であれば承諾しないような見合い話を、兄は自分の利益を優先して受けた。
 多分だけど、そういったところなのだろうと想像はつく。それならば瀬戸口さんが、そんな申し訳なさそうな表情をする必要はないと思うのだけれど。
 しかし彼にも、それなりの事情があるようで……