「悪い意味に聞こえてしまっていたのならば、申し訳ない。俺は君について、あまり良いようには聞いてはいなかったので」
「えっと、それはどういう……?」
この男性の話し方からすると、むしろ直接会ってからの方が印象が良かったかのように聞こえるのだけれど。今まで初対面の人には『期待外れ』とばかり言われてきた私は、そんなことがあるのだろうかとつい疑ってしまう。
今日着ている綺麗な花柄の着物だけは、今日の為にと兄がわざわざ用意してくれたものだが……私自身はヘアメイク以外、いつもとそう変わらなくて。
けれど、もしもこの男性が本心でそう言ってくれているのなら……と心の奥では期待してしまいそうになる。
「そう気にしなくていいですよ。きっと浩晴が、俺と貴女を会わせたくなくてついた嘘だったのでしょうから」
「……そうなのですね」
そんなはずはないと思う。このお見合い話を私に伝えた時の兄は、とても嬉しそうだったから。そう考えると、今回の縁談に対して色々な疑問が浮かんでくる。
あの家から私という厄介払いが出来たとしても、その相手が兄の昔馴染みだということも不思議に思えて。兄が古城家にとっての利益を優先している可能性はあるが、何かが頭の隅で引っ掛かっている感じがする。
「ところで……伊千夜さんは今回の縁談について、浩晴からどこまで話を聞かれていますか?」
「どこまで、とは?」

