「……その、大変失礼な事をお聞きしますが。貴女が古城 伊千夜さん、という女性で間違い無いのですよね?」
「はい、私の名前は古城 伊千夜であってますけれど……」
お見合い当日。
向かい合い座っている男性から『はじめまして』の挨拶よりもより先に、そう問いかけられて流石に戸惑ってしまう。
もしかしてこの男性は私の顔も全く知らないまま、見合い場所まで来たのだろうか? 見合い写真くらいは兄から渡されてる筈なのに、私の顔をまじまじと見ては不思議そうな表情を浮かべている。
「……アイツから聞いた話とは随分違うな」
実際に会ってみて、ガッカリされたのだとしたら申し訳ないとは思うけれど。相手側から断られた場合でも、兄からきつい叱責を受けるかもしれないと少し緊張してしまった。
すると男性はそんな私に対して、真面目な表情のまま頭を下げて……
「変な態度を取ってしまって申し訳なかった。貴女が俺の想像していた女性像と、あまりに違っていたもので」
「……いえ、そんなに気にしてませんので」
もしかしたらこの方は、見合いの席にこんな貧相な女が来るとは思っていなかったのかも知れない。社長令嬢といわれる身ではあるけれど、古城家での私の立場は使用人みたいなものだから。
ガサガサに荒れた手や、必要最低限のケアしかされていない髪。メイクも兄嫁の美弥さんに怒られないよう、なるべく目立たないようにしていて。
……そんなだから、私にはこの人の言う「想像と違った」というのが良い意味だとは思えなくて。ただこれ以上悪い印象を持たれないように、気をつけようと考えていた。
けれども、この人はそんな私の予想とは全く違うことを話し始めて。

