2024年の春、高校の入学式。莉乃は、いつだって隣にいる幼馴染の翔と同じ高校に通うことになった。 「また寝癖ついてんぞ、莉乃」 翔がからかうように莉乃の頭を撫でる。莉乃は、そんな何気ない翔の仕草に、昔からドキッとしてしまう自分を隠しきれない。 しかし、翔にとって莉乃はただの幼馴染。他の女子と楽しそうに話す翔を見るたびに、莉乃の胸はチクリと痛む。「私たちは、ずっとこのままなんだ」と、そう自分に言い聞かせる日々だった。 高校2年の夏、莉乃たちの平穏な関係に、翔の親友である蓮が現れる。蓮は、莉乃を幼馴染としてではなく、一人の女性として見つめていた。 夏祭りの夜、人混みの中で翔とはぐれてしまった莉乃は、不安に駆られていた。その時、 誰かが莉乃の腕を強く引く。見上げると、屋台の明かりに照らされた蓮の顔があった。 「翔なら、あっちで射的に夢中だよ。・・・莉乃が寂しそうな顔してるのに、気づきもしない」 蓮はそう言うと、莉乃の手を取り、優しく握った。 「・・・俺なら、君を一人にしない。翔の隣にいるのが辛いなら、俺の方を見てもいいんだよ」 花火の音にかき消されそうな蓮の声。その言葉に、莉乃の心は揺れる。翔との「当たり前」の関係とは違う、蓮の真っ直ぐな視線に戸惑いながらも、どこか惹かれている自分に気づき始めていた。
