あたしとルナは、クウミたちの前で必死に息を整えた。
そんなあたしたちの様子を呆れたような、困ったような表情で見ていた花魁姿の妖狐クウミは、扇子を畳むと隣に立つモコ太を突っついた。
「主さんたち、水筒持っていたざんしょ? 渡してあげなんし」
「え? おいらたちのを? しょうがないなぁ。ほら、ルナねーちゃん。飲みな」
「アサヒおねーちゃんにはアヤのをあげるね。落ち着いて飲んで」
「「ありがと!」」
水筒は竹筒でできていた。
中身は言われた通り、水だ。特に冷えているわけではないけど、いやぁ美味しい!
一時間、山道を走りっぱなしだったしね。
無我夢中で飲み干しちゃった。
「ごっめん、アヤちゃん。全部飲んじゃった」
「いいよいいよ。水なんてまたどこかで汲めばいいし」
「ありがとう、モコ太。助かったわ」
「お、おぅ。まぁなんちゃないさ。へへっ」
水筒を返したあたしたちは、再び三人組に向き直った。
気を取り戻したか、クウミが再び扇子をバっと広げた。
あ、そこのくだり、やり直すんだ。
「もうようござりんすね? では。えー、この先に白虎のほこらがあるが、これ以上は行かせんせんよ!」
「行かせないぜ!」
「行かせないんだったら!」
竹林を前に、あたしたちとクウミたちがにらみ合う。
モコ太くんは青い忍び装束、アヤちゃんは赤い忍び装束をまとった幼稚園児といった容姿だ。
見ていてほっこりする。
「野狐の皆さあぁぁあん! お願いしまぁぁぁぁぁあす!!」
どこから現れたか、モコ太くんの呼び声に応じて、クウミたちの両脇に茶皮の妖狐たちがズラっと並んだ。
左右十匹ずつ、計二十匹だ。
「やっておしまい!!」
クウミの号令の下、野狐が一斉に駆けてくる。
迫りくる野狐をにらみつけながらあたしとルナは叫んだ。
「「願いかなえたまえ! 変身!!」」
ルナとそろって大きく二回柏手を打つと、両腕のブレスレットがうなりをあげて回転し、そこから炎の龍が飛び出した。
龍があたしの周囲を激しく飛び回る。
龍の火の粉を浴びたあたしの服が、みるみるうちにミニスカ巫女服へと変化していく。
魔法乙女のコスチュームだ。
最後の仕上げに、炎の龍が高空から突っ込んできてあたしと融合した。
左右のこめかみの位置に、光を放ちつつ龍のツノが生える。
決めポーズ、いくよ!!
「魔法乙女・アサヒ!!」
「魔法乙女・ルナ!!」
「「妖怪退治はおまかせあれ!!」」
バババババァァァァァアァアアアアアン!!!!!!
炎龍と水竜の形をとったあたしとルナの魔力が、変身で消費しきれず身体からあふれ出すと、連発する花火のように勢いよく弾け散った。
気分は最高! テンション、アゲアゲ!
「いくよ! キューティ・ネイル!!」
その場でクルっとターンしたあたしの手の指の爪が、キラキラとピンク色に光輝く。
見せびらかすように手を広げる。
ほら可愛い!! あたしのこのキラッキラの爪、どうよ!
「ほー。女子力の低いアサヒがネイルとはね。うん、いいんじゃない? それで? そこから?」
「え? えーっと、えーっと……ミサイル?」
シパパパパァァァン!!
どうしたらいいか分からず思わず首をかしげた瞬間、迫りくる野狐たちに向かってあたしの両手からつけ爪が十個、白煙を吐きつつ飛んだ。
「あ……」
バリバリバリバリ!!
「「「ギャオォォッォォォォォオォォオォンン!!」」」
つけ爪は野狐に当たると同時に、見ているこちらの目がおかしくなるんじゃないかと思うくらいスパークした。
爆発だと痛いだろうからせめて電気ショックで、って思ったんだよね。
それが思った以上に痺れたようで、毛がチリチリになった野狐たちがヨロヨロと歩いて戦線離脱する。
危険を感じたか、残っていた野狐たちが、あたしを放ってルナに向かっていく。
ルナはいかにもな感じのロングヘアの美少女だし、そっちのほうがたやすいと思うのも分かるけど、どうかなぁ?
「しょうがないから、わたしの高い女子力を見習うといいわ、アサヒ! ラブリーキッス……」
ルナの右手の人差し指と中指が、うるおいたっぷりぷるっぷるの唇をさわる。
投げキッスのポーズだ。
「キ、キッス!? どどど、どうするの? それからそれから!?」
とそこで、ルナの手が止まる。
よく見ると、ルナも首をかしげつつ何やら考えこんでいる。
ノリで始めちゃったようで、その先を考えていなかったみたい。
「……ビーム?」
ギュオンっ!
「どわわぁぁぁぁぁあああ!!」
投げキッスとともにルナの唇から放たれたビームは、目の前に広がる竹林を綺麗に円形にくり貫いた。
慌ててしゃがんだクウミさんがゼェハァと荒い息を吐いている。
「あんたたち、情緒ってものを理解しなさいよ!! ド素人はこれだから!! えぇい、火車召喚!!」
クウミの目の前に、燃え盛る車輪がついた牛車が現れた。
車夫はなんとミノタウロスだ。
黒い腹掛に白の半股引、白の足袋と、ちゃんと人力車の車夫の格好をしている。
ところが、なぜかミノタウロスの視線があたしに集中している。
何やら興奮しているようで、鼻の穴をおっぴろげている。
「おっかしいな。特に問題は……袴!?」
ミノタウロスの口の端からよだれが垂れ始める。
あたしの赤い袴に反応しているのだ。
「ふっふっふ。この火車は対象を轢くと同時に焼き尽くしんす。当たればとっても痛うござりんす。消し炭になるがようござりんすえ! さぁ、行きなんし!!」
カッコよく飛び乗ろうとするクウミが牛車に着席しようとしたそのとき、残念ながら尻の下に牛車はなかった。
あたしの袴に反応したミノタウロスが、目の色を変えて走り出したのだ。あたしに向かって。
「あたぁぁぁぁぁああああ!! 尻が! 尻が割れんしたぁぁぁぁああ!!」
綺麗に尻から落ちたクウミが、痛みのあまりか絶叫する。
「わわわ、どうしよう、どうしよう! えーっと……法具顕現! イリュージョンハリセン!!」
幸いにして魔法乙女となったあたしの反射速度はとんでもなく速い。
あたしは、『叩かれると幻影を見る』という能力を込めたハリセンを右手に出すと、牛車を牽きつつ猛スピードで突っ込んでくるミノタウロスを華麗に避けつつその後頭部を思いっきりひっぱたいた。
「ぶもぉぉぉぉぉぉおおおおお!!」
ミノタウロスはそのまま爆走したのち、霞のように消え去った。
どこに行ったのかって? さぁ。目の前にニンジンをぶら下げられた馬みたいに、赤い布が前方に見えるようにしたから、延々追っかけてるでしょ。
そして目の前に残るは、腰をしたたかに打って悶絶している妖狐クウミだった。
「「お館さま!!」」
鉄鼠兄妹がそばに駆け寄り、何ごとか指示を聞いている。
やがてモコ太くんが両手を頭の上で激しく振り合わせた。
「ギブアップ! 試合終了ぉぉぉ! 野狐の皆さん、お願いしまぁぁぁあす!!」
どこからか担架を持った野狐が四匹ほど現れると、クウミを乗せ、いずこかへと運び去っていった。
たぶん例のほこらに向かったのだろうけど、無防備状態で腰を打ったはずだから、かなり痛いはずだ。
担架を見送ったあたしたちは、撤収作業を始めたモコ太くんに話しかけた。
「ね、どうする? 続き、やる?」
「お館さまはあんな状態だし、今日はもういいんじゃないかな。アヤ、お二人を白虎さまのほこらに案内してあげてくれ。おいらも後から行くから」
「あい、兄さま」
「え? 案内してくれるの?」
「だって秘密にしろとか言われてねーもん。あー、野狐の皆さん、今日は解散です。お手当をお支払いしますので、ここに並んでいただけますか? 」
モコ太くんの呼びかけに応じて、野狐たちが集まってくる。
何か渡しているけれど、あれ、油揚げかな。
アヤちゃんに連れられて竹林を奥へ奥へと進んでいったあたしたちは、程なく小さな石のほこらの前に辿りついた。
かなり放っておかれていたようで、青龍のほこら同様汚れている。
「こうして放っておかれたら、そりゃ力なんて出ないわよね」
ルナがほこらの屋根に乗った枯れ葉を手で払いながら苦笑する。
「居心地だって悪いもんね。んじゃ、さっそく綺麗にしちゃお」
あたしとルナの左手首のブレスレットが回転し、水をまとった風が巻き起こる。
石の表面に水流が当たり、細かな汚れも弾き飛ばす。
ほこらは見る間にきれいになり、苔で隠れた模様――白虎の図柄が見えてきた。
「ねね、これってば何の術? 水遁の術? すごいね!」
赤い忍び装束のアヤちゃんが興味津々であたしの腰の辺りにつかまる。
「術っていうより魔法……かな?」
「魔法!? 魔法!!」
アヤちゃんの目が輝く。
無邪気だからか、この子は見ているだけで幸せな気分になる。
人間形態、ネズミ形態、どっちも可愛いから、敵対はしたくないなぁ。
ルナがアヤちゃんに向かってウィンクしつつ、すっかり綺麗になったほこらにお札を貼った。
「「白虎さま、お目覚め下さい!」」
あたしたちの願いを受け、お札に書かれた達筆な筆文字がほのかに光る。
とそこへ、撤収作業が終わったモコ太くんが駆けてきた。
「あ、いたいた。迷わず着けたようだな。良かった良かった」
『グウォォォォォォォォオオオオオオンンンン!!!!』
モコ太くんが合流すると同時に、どこからか大型獣の咆哮が聞こえてきたのでした。
そんなあたしたちの様子を呆れたような、困ったような表情で見ていた花魁姿の妖狐クウミは、扇子を畳むと隣に立つモコ太を突っついた。
「主さんたち、水筒持っていたざんしょ? 渡してあげなんし」
「え? おいらたちのを? しょうがないなぁ。ほら、ルナねーちゃん。飲みな」
「アサヒおねーちゃんにはアヤのをあげるね。落ち着いて飲んで」
「「ありがと!」」
水筒は竹筒でできていた。
中身は言われた通り、水だ。特に冷えているわけではないけど、いやぁ美味しい!
一時間、山道を走りっぱなしだったしね。
無我夢中で飲み干しちゃった。
「ごっめん、アヤちゃん。全部飲んじゃった」
「いいよいいよ。水なんてまたどこかで汲めばいいし」
「ありがとう、モコ太。助かったわ」
「お、おぅ。まぁなんちゃないさ。へへっ」
水筒を返したあたしたちは、再び三人組に向き直った。
気を取り戻したか、クウミが再び扇子をバっと広げた。
あ、そこのくだり、やり直すんだ。
「もうようござりんすね? では。えー、この先に白虎のほこらがあるが、これ以上は行かせんせんよ!」
「行かせないぜ!」
「行かせないんだったら!」
竹林を前に、あたしたちとクウミたちがにらみ合う。
モコ太くんは青い忍び装束、アヤちゃんは赤い忍び装束をまとった幼稚園児といった容姿だ。
見ていてほっこりする。
「野狐の皆さあぁぁあん! お願いしまぁぁぁぁぁあす!!」
どこから現れたか、モコ太くんの呼び声に応じて、クウミたちの両脇に茶皮の妖狐たちがズラっと並んだ。
左右十匹ずつ、計二十匹だ。
「やっておしまい!!」
クウミの号令の下、野狐が一斉に駆けてくる。
迫りくる野狐をにらみつけながらあたしとルナは叫んだ。
「「願いかなえたまえ! 変身!!」」
ルナとそろって大きく二回柏手を打つと、両腕のブレスレットがうなりをあげて回転し、そこから炎の龍が飛び出した。
龍があたしの周囲を激しく飛び回る。
龍の火の粉を浴びたあたしの服が、みるみるうちにミニスカ巫女服へと変化していく。
魔法乙女のコスチュームだ。
最後の仕上げに、炎の龍が高空から突っ込んできてあたしと融合した。
左右のこめかみの位置に、光を放ちつつ龍のツノが生える。
決めポーズ、いくよ!!
「魔法乙女・アサヒ!!」
「魔法乙女・ルナ!!」
「「妖怪退治はおまかせあれ!!」」
バババババァァァァァアァアアアアアン!!!!!!
炎龍と水竜の形をとったあたしとルナの魔力が、変身で消費しきれず身体からあふれ出すと、連発する花火のように勢いよく弾け散った。
気分は最高! テンション、アゲアゲ!
「いくよ! キューティ・ネイル!!」
その場でクルっとターンしたあたしの手の指の爪が、キラキラとピンク色に光輝く。
見せびらかすように手を広げる。
ほら可愛い!! あたしのこのキラッキラの爪、どうよ!
「ほー。女子力の低いアサヒがネイルとはね。うん、いいんじゃない? それで? そこから?」
「え? えーっと、えーっと……ミサイル?」
シパパパパァァァン!!
どうしたらいいか分からず思わず首をかしげた瞬間、迫りくる野狐たちに向かってあたしの両手からつけ爪が十個、白煙を吐きつつ飛んだ。
「あ……」
バリバリバリバリ!!
「「「ギャオォォッォォォォォオォォオォンン!!」」」
つけ爪は野狐に当たると同時に、見ているこちらの目がおかしくなるんじゃないかと思うくらいスパークした。
爆発だと痛いだろうからせめて電気ショックで、って思ったんだよね。
それが思った以上に痺れたようで、毛がチリチリになった野狐たちがヨロヨロと歩いて戦線離脱する。
危険を感じたか、残っていた野狐たちが、あたしを放ってルナに向かっていく。
ルナはいかにもな感じのロングヘアの美少女だし、そっちのほうがたやすいと思うのも分かるけど、どうかなぁ?
「しょうがないから、わたしの高い女子力を見習うといいわ、アサヒ! ラブリーキッス……」
ルナの右手の人差し指と中指が、うるおいたっぷりぷるっぷるの唇をさわる。
投げキッスのポーズだ。
「キ、キッス!? どどど、どうするの? それからそれから!?」
とそこで、ルナの手が止まる。
よく見ると、ルナも首をかしげつつ何やら考えこんでいる。
ノリで始めちゃったようで、その先を考えていなかったみたい。
「……ビーム?」
ギュオンっ!
「どわわぁぁぁぁぁあああ!!」
投げキッスとともにルナの唇から放たれたビームは、目の前に広がる竹林を綺麗に円形にくり貫いた。
慌ててしゃがんだクウミさんがゼェハァと荒い息を吐いている。
「あんたたち、情緒ってものを理解しなさいよ!! ド素人はこれだから!! えぇい、火車召喚!!」
クウミの目の前に、燃え盛る車輪がついた牛車が現れた。
車夫はなんとミノタウロスだ。
黒い腹掛に白の半股引、白の足袋と、ちゃんと人力車の車夫の格好をしている。
ところが、なぜかミノタウロスの視線があたしに集中している。
何やら興奮しているようで、鼻の穴をおっぴろげている。
「おっかしいな。特に問題は……袴!?」
ミノタウロスの口の端からよだれが垂れ始める。
あたしの赤い袴に反応しているのだ。
「ふっふっふ。この火車は対象を轢くと同時に焼き尽くしんす。当たればとっても痛うござりんす。消し炭になるがようござりんすえ! さぁ、行きなんし!!」
カッコよく飛び乗ろうとするクウミが牛車に着席しようとしたそのとき、残念ながら尻の下に牛車はなかった。
あたしの袴に反応したミノタウロスが、目の色を変えて走り出したのだ。あたしに向かって。
「あたぁぁぁぁぁああああ!! 尻が! 尻が割れんしたぁぁぁぁああ!!」
綺麗に尻から落ちたクウミが、痛みのあまりか絶叫する。
「わわわ、どうしよう、どうしよう! えーっと……法具顕現! イリュージョンハリセン!!」
幸いにして魔法乙女となったあたしの反射速度はとんでもなく速い。
あたしは、『叩かれると幻影を見る』という能力を込めたハリセンを右手に出すと、牛車を牽きつつ猛スピードで突っ込んでくるミノタウロスを華麗に避けつつその後頭部を思いっきりひっぱたいた。
「ぶもぉぉぉぉぉぉおおおおお!!」
ミノタウロスはそのまま爆走したのち、霞のように消え去った。
どこに行ったのかって? さぁ。目の前にニンジンをぶら下げられた馬みたいに、赤い布が前方に見えるようにしたから、延々追っかけてるでしょ。
そして目の前に残るは、腰をしたたかに打って悶絶している妖狐クウミだった。
「「お館さま!!」」
鉄鼠兄妹がそばに駆け寄り、何ごとか指示を聞いている。
やがてモコ太くんが両手を頭の上で激しく振り合わせた。
「ギブアップ! 試合終了ぉぉぉ! 野狐の皆さん、お願いしまぁぁぁあす!!」
どこからか担架を持った野狐が四匹ほど現れると、クウミを乗せ、いずこかへと運び去っていった。
たぶん例のほこらに向かったのだろうけど、無防備状態で腰を打ったはずだから、かなり痛いはずだ。
担架を見送ったあたしたちは、撤収作業を始めたモコ太くんに話しかけた。
「ね、どうする? 続き、やる?」
「お館さまはあんな状態だし、今日はもういいんじゃないかな。アヤ、お二人を白虎さまのほこらに案内してあげてくれ。おいらも後から行くから」
「あい、兄さま」
「え? 案内してくれるの?」
「だって秘密にしろとか言われてねーもん。あー、野狐の皆さん、今日は解散です。お手当をお支払いしますので、ここに並んでいただけますか? 」
モコ太くんの呼びかけに応じて、野狐たちが集まってくる。
何か渡しているけれど、あれ、油揚げかな。
アヤちゃんに連れられて竹林を奥へ奥へと進んでいったあたしたちは、程なく小さな石のほこらの前に辿りついた。
かなり放っておかれていたようで、青龍のほこら同様汚れている。
「こうして放っておかれたら、そりゃ力なんて出ないわよね」
ルナがほこらの屋根に乗った枯れ葉を手で払いながら苦笑する。
「居心地だって悪いもんね。んじゃ、さっそく綺麗にしちゃお」
あたしとルナの左手首のブレスレットが回転し、水をまとった風が巻き起こる。
石の表面に水流が当たり、細かな汚れも弾き飛ばす。
ほこらは見る間にきれいになり、苔で隠れた模様――白虎の図柄が見えてきた。
「ねね、これってば何の術? 水遁の術? すごいね!」
赤い忍び装束のアヤちゃんが興味津々であたしの腰の辺りにつかまる。
「術っていうより魔法……かな?」
「魔法!? 魔法!!」
アヤちゃんの目が輝く。
無邪気だからか、この子は見ているだけで幸せな気分になる。
人間形態、ネズミ形態、どっちも可愛いから、敵対はしたくないなぁ。
ルナがアヤちゃんに向かってウィンクしつつ、すっかり綺麗になったほこらにお札を貼った。
「「白虎さま、お目覚め下さい!」」
あたしたちの願いを受け、お札に書かれた達筆な筆文字がほのかに光る。
とそこへ、撤収作業が終わったモコ太くんが駆けてきた。
「あ、いたいた。迷わず着けたようだな。良かった良かった」
『グウォォォォォォォォオオオオオオンンンン!!!!』
モコ太くんが合流すると同時に、どこからか大型獣の咆哮が聞こえてきたのでした。



