巨大化したクウミさんが上空からあたしたちをにらんだ。
「それが魔法乙女の正装だよ。覚えておくんだね。さぁ、これでやっとスタートラインでありんす。かかっておいで、ヒヨッコども!」
言うや否や、クウミさんの身体から数えきれないほどの火の玉が飛び出して、あたしたちに向かって飛んできた。
「法具顕現、光の盾」
あたしの左手に光の盾が現れた。
ところが、盾のはずがどことなく鍋ぶたっぽい形をしている。
しょーがないじゃん。とっさに思い浮かべたのが、ピコピコハンマーを防ぐゲームだったんだもん。
構えた鍋ぶたに火の玉が激しく当たる。
火の玉には追尾機能があるみたいで、避けた玉が空中で曲がってまた襲ってくる。
ガードするので精いっぱいだ。
「ボーっとしているんじゃありんせんよ、モコ太! アヤ! 人間の目は後ろについていねえんだ。相棒なら全方位をチェックして、魔法乙女の手助けをしなきゃダメじゃありんせんか!」
「「は、はい! お館さま!」」
さっそく二人がレクチャーを受けている。
意外とクウミさん、コーチ役、合ってる?
あたしとルナは二手に分かれて走り出した。
これで一人はノーマークとなるはず。
とそこで、背後からピコンピコンとソナー音が聞こえてきた。
アヤちゃんが、敵弾頭の方向と距離を教えてくれているのだ。
音が急速に大きくなるのを感じたあたしは、しっかり鍋ぶたを握ると、タイミングを合わせて振り返った。
直後、火の玉が激しい音を立てて鍋ぶたにぶち当たる。
ドドドドドド!!
「ととととと!!」
よし、全弾回避。アヤちゃん、ナイス。
「ふん。よくしのいだ。だが防御しているだけじゃあちきは倒せないよ?」
巨大キツネがシッポを振りまわし、足を地面に叩きつけた。
ドドドォォォオオン!!
地響きぃぃ!
こんな攻撃、食らったら一発アウトだ。
でも、あたしには秘策がある!
「法具顕現、魔法のハンマー!!」
右手にピコハンを召喚したあたしは、クウミさんの踏み潰し攻撃を避けつつ、その右前足をピコハンで思いっきり叩いた。
ポヒュッ!
「そんなおもちゃが効くかぁ!!」
意にも介さず、巨大な手を振ってくる。
モグラたたきじゃないっての!
間一髪ジャンプで避けたあたしは、今度は左前足にピコハンを当てた。
ポキュン!
「ん!? なんだそれは! 何をしている!?」
避けてはピコハンを当てる、を繰り返すあたしの足元が、一面の花畑と化しているのに気づいたクウミさんが驚きの表情を見せる。
そりゃそうだ。さっきまで草ぼうぼうだった野っ原が、花畑になりつつあるんだから。
「クウミさんの溜め込んだ妖力を地面に逃がしているの! 見なよ、しっぽがもう一本減っているよ! よぉし、この調子!」
「なにを!」
怒りの波動か、クウミさんの身体から炎が波となって吹き出す。
あたしは炎をアクロバティックに避けながら、尚もピコハンで叩いた。
徐々にクウミさんの体が小さくなっていく。
「苦しみも! 悲しみも! 全部吐き出して、笑って明日を迎えよう!」
「あんたに何が分かりんす!」
「分からないよ! でも寄り添うことはできる!」
「くっ!」
「魔法の光輪!」
ギュィィィィン!!
どこかから光の輪が飛んでくると、クウミさんの巨体に貼りついた。
ルナだ。光の輪がそのまま表面の毛を刈り始める。
どうやら効果はピコハンと同じようで、妖力ごと毛を刈り取って、それを地面に逃がしているようだ。
落ちた毛が花と化してその場に根づいていく。
さすがのクウミさんも、この攻撃には慌てる。
「ちょ、ちょいと何をしてくれちゃってるの! 髪は女の命でありんす! 髪はやめなんしぃぃぃ!!」
「ルナ、容赦ないなぁ」
地面はすっかり花畑に変わり、妖狐のしっぽも五本にまで減っている。
あともうちょっと。
「アヤちゃん、最後、全力でいくよ!」
「はーーーい!」
「最大出力!! ゴォォォルデン、ハンマァァァァァァアア!!」
三百メートルの高さまでジャンプしたあたしの手の中のピコハンが金色に光を放った。
あたしの後ろ――空に幻影のピコハンが現れる。
大きさはスカイツリーくらい。
身体が軽自動車並みにまで小さくなってしまったクウミさんにはちょっと大きいかな。
その顔が泣き笑いを浮かべる。
「……うそざんしょ?」
「うそじゃなーーーーーい!!」
あたしは空中で、手の中の金色ピコハンを思いっきり振り抜いた。
コンマ一秒遅れて、地上のクウミさん目がけて幻影の巨大ピコハンが振り下ろされる。
「ひ、ひぃぃ!!」
ポキュゥゥゥゥン!!
大きさのわりにはまぬけな音を出した幻影のピコハンは、クウミさんにヒットすると同時に、霞のように消え去った。
直後、あたしのブレスレットが音を立てて割れる。
能力の限界を超えたのだ。
着地と同時に変身が解ける。
普通の小学生の姿に戻ったあたしのところに、同じく変身の解けたルナが駆けてきた。
その手に持った青いブレスレットが割れている。
「アサヒも? わたしもよ」
「あーあ。これで変身ヒロインも引退かぁ。でも、クウミさんを無事無力化できたし、それでよしとしよう」
あたしの視線の先には、アンコちゃんとクウミさんがいた。
遥か遠くまで広がったお花畑の中で、キツネ状態のクウミさんが大の字になってゼェハァと荒い呼吸をしている。
妖気が散らされたからか、クウミさんは子犬なみの大きさになっており、すでに脅威は感じない。
アンコちゃんはひざまずくと、疲労困憊といった感じのクウミさんを拾い上げ、両手でギュっと抱きしめた。
クウミさんがアンコちゃんの肩に頭をもたせかけ、目をつぶる。
「気は済んだ?」
「……ま、いいでありんしょう」
「おかえり、クゥ」
「ふん、ただいまでありんす」
そう言って、二人はどちらからともなく笑ったのでした。
「それが魔法乙女の正装だよ。覚えておくんだね。さぁ、これでやっとスタートラインでありんす。かかっておいで、ヒヨッコども!」
言うや否や、クウミさんの身体から数えきれないほどの火の玉が飛び出して、あたしたちに向かって飛んできた。
「法具顕現、光の盾」
あたしの左手に光の盾が現れた。
ところが、盾のはずがどことなく鍋ぶたっぽい形をしている。
しょーがないじゃん。とっさに思い浮かべたのが、ピコピコハンマーを防ぐゲームだったんだもん。
構えた鍋ぶたに火の玉が激しく当たる。
火の玉には追尾機能があるみたいで、避けた玉が空中で曲がってまた襲ってくる。
ガードするので精いっぱいだ。
「ボーっとしているんじゃありんせんよ、モコ太! アヤ! 人間の目は後ろについていねえんだ。相棒なら全方位をチェックして、魔法乙女の手助けをしなきゃダメじゃありんせんか!」
「「は、はい! お館さま!」」
さっそく二人がレクチャーを受けている。
意外とクウミさん、コーチ役、合ってる?
あたしとルナは二手に分かれて走り出した。
これで一人はノーマークとなるはず。
とそこで、背後からピコンピコンとソナー音が聞こえてきた。
アヤちゃんが、敵弾頭の方向と距離を教えてくれているのだ。
音が急速に大きくなるのを感じたあたしは、しっかり鍋ぶたを握ると、タイミングを合わせて振り返った。
直後、火の玉が激しい音を立てて鍋ぶたにぶち当たる。
ドドドドドド!!
「ととととと!!」
よし、全弾回避。アヤちゃん、ナイス。
「ふん。よくしのいだ。だが防御しているだけじゃあちきは倒せないよ?」
巨大キツネがシッポを振りまわし、足を地面に叩きつけた。
ドドドォォォオオン!!
地響きぃぃ!
こんな攻撃、食らったら一発アウトだ。
でも、あたしには秘策がある!
「法具顕現、魔法のハンマー!!」
右手にピコハンを召喚したあたしは、クウミさんの踏み潰し攻撃を避けつつ、その右前足をピコハンで思いっきり叩いた。
ポヒュッ!
「そんなおもちゃが効くかぁ!!」
意にも介さず、巨大な手を振ってくる。
モグラたたきじゃないっての!
間一髪ジャンプで避けたあたしは、今度は左前足にピコハンを当てた。
ポキュン!
「ん!? なんだそれは! 何をしている!?」
避けてはピコハンを当てる、を繰り返すあたしの足元が、一面の花畑と化しているのに気づいたクウミさんが驚きの表情を見せる。
そりゃそうだ。さっきまで草ぼうぼうだった野っ原が、花畑になりつつあるんだから。
「クウミさんの溜め込んだ妖力を地面に逃がしているの! 見なよ、しっぽがもう一本減っているよ! よぉし、この調子!」
「なにを!」
怒りの波動か、クウミさんの身体から炎が波となって吹き出す。
あたしは炎をアクロバティックに避けながら、尚もピコハンで叩いた。
徐々にクウミさんの体が小さくなっていく。
「苦しみも! 悲しみも! 全部吐き出して、笑って明日を迎えよう!」
「あんたに何が分かりんす!」
「分からないよ! でも寄り添うことはできる!」
「くっ!」
「魔法の光輪!」
ギュィィィィン!!
どこかから光の輪が飛んでくると、クウミさんの巨体に貼りついた。
ルナだ。光の輪がそのまま表面の毛を刈り始める。
どうやら効果はピコハンと同じようで、妖力ごと毛を刈り取って、それを地面に逃がしているようだ。
落ちた毛が花と化してその場に根づいていく。
さすがのクウミさんも、この攻撃には慌てる。
「ちょ、ちょいと何をしてくれちゃってるの! 髪は女の命でありんす! 髪はやめなんしぃぃぃ!!」
「ルナ、容赦ないなぁ」
地面はすっかり花畑に変わり、妖狐のしっぽも五本にまで減っている。
あともうちょっと。
「アヤちゃん、最後、全力でいくよ!」
「はーーーい!」
「最大出力!! ゴォォォルデン、ハンマァァァァァァアア!!」
三百メートルの高さまでジャンプしたあたしの手の中のピコハンが金色に光を放った。
あたしの後ろ――空に幻影のピコハンが現れる。
大きさはスカイツリーくらい。
身体が軽自動車並みにまで小さくなってしまったクウミさんにはちょっと大きいかな。
その顔が泣き笑いを浮かべる。
「……うそざんしょ?」
「うそじゃなーーーーーい!!」
あたしは空中で、手の中の金色ピコハンを思いっきり振り抜いた。
コンマ一秒遅れて、地上のクウミさん目がけて幻影の巨大ピコハンが振り下ろされる。
「ひ、ひぃぃ!!」
ポキュゥゥゥゥン!!
大きさのわりにはまぬけな音を出した幻影のピコハンは、クウミさんにヒットすると同時に、霞のように消え去った。
直後、あたしのブレスレットが音を立てて割れる。
能力の限界を超えたのだ。
着地と同時に変身が解ける。
普通の小学生の姿に戻ったあたしのところに、同じく変身の解けたルナが駆けてきた。
その手に持った青いブレスレットが割れている。
「アサヒも? わたしもよ」
「あーあ。これで変身ヒロインも引退かぁ。でも、クウミさんを無事無力化できたし、それでよしとしよう」
あたしの視線の先には、アンコちゃんとクウミさんがいた。
遥か遠くまで広がったお花畑の中で、キツネ状態のクウミさんが大の字になってゼェハァと荒い呼吸をしている。
妖気が散らされたからか、クウミさんは子犬なみの大きさになっており、すでに脅威は感じない。
アンコちゃんはひざまずくと、疲労困憊といった感じのクウミさんを拾い上げ、両手でギュっと抱きしめた。
クウミさんがアンコちゃんの肩に頭をもたせかけ、目をつぶる。
「気は済んだ?」
「……ま、いいでありんしょう」
「おかえり、クゥ」
「ふん、ただいまでありんす」
そう言って、二人はどちらからともなく笑ったのでした。



