君がいてくれて。

優花と樹が別室になってから約1ヶ月半が過ぎた。
3月に入って少しずつ桜の蕾が開き春の空気を感じる。
そんな中、少し僕は樹の異変に気づき始めていた。
「なぁ、樹。」
「ん?どした?」
「最近、なんか痩せた…?僕の気のせいか…?」
それは樹が痩せたように見える事。
いつも会っている僕だからわかることなのかもしれないけれど前よりも少し服にゆとりができているような気がした。
「そうかな?……そんな自分では分かんないけど……。」
「ほんと?体調悪いとかないの?」
「え、うん。少し体がだるい日とか食欲ない日はあるっちゃあるけどさ。そんなに苦しいとかじゃないし。」
そう話す樹はいつもの花が咲いたような明るい笑顔を僕に向けてきた。
でもその笑顔を見ても僕の不安が消え去ることはなくそれどころか日に日に少しずつ痩せていく樹を見て不安は大きくなっていくばかりだった。

それからまた半月が経った。
桜はもう満開に近くて樹と窓の外を見ているとふと樹が一言静かにこぼした。
「そういえば、去年優花と桜見に行く約束したな……。でも、無理か……。」
少し寂しそうな樹の顔を見て少しでも元気づけようと優花に会いに行かないかと提案した。
明るくなった樹の表情を見ながら優花の病室に向かうとちょうど部屋から星川先生が出てくるところだった。
「あら、紘くん達じゃない。優花ちゃんに会いに来たの?」
「あ、はい。優花、大丈夫ですか?」
僕がそう聞くと先生は優しくでも少し暗さを含んだ笑顔で頷く。
「ええ。倒れた時よりはだんだん良くなってるよ。」
きっと個人情報だから僕たちに先生から治療の内容は言えないのだろう。
その表情から僕は何となく察した。
僕達が面会室に入るとガラスの向こうにいる優花は前回会った時よりも痩せて元気がないように見えた。
「あれ……、紘くんと樹くん……?また会いに来てくれたんだね……。」
小さく弱った声。優花の声を聞いて僕は胸が痛くなった。
「優花。会いに来たよ。今、大丈夫だった?」
樹がそう聞くと優花は小さく頷く。
面会中は樹の話を優しい笑顔で頷きながら聞いていて僕達が入ってきた時よりは笑顔が明るくなったような気がした。
楽しそうに話す2人を横から見つめて思う。
お願い。神様でも誰でもいい。この2人の笑顔を。僕が大好きな2人の笑顔を。これ以上僕から樹から優花から大切な物を奪わないで。