君がいてくれて。

規則的に聞こえる機械音。
重いまぶたをゆっくりと開けると体にたくさん繋がっている管と看護師さんが見えた。
口には酸素マスクも付いていて何が何だかわからなかった。
「先生!如月さんの意識戻りました!」
看護師さんがナースコールにそう叫ぶとしばらくして廊下から慌ただしい足音が聞こえてガラッと扉が開いた。
「優花ちゃん……!!!」
入ってきたのは星川先生で息を切らしながらこちらに歩いてきた。
「良かった……目を覚まして……。」
先生の話によると私は日和ちゃんの手術が終わった後心臓発作で倒れたとのことだった。
「きっと日和ちゃんの事で緊張してたのか、緊張すると体調の変化が自分で分かりにくなるからね。」
「すみませんでした…。無理をしてしまったばかりに……。」
樹くんが声をかけてくれた時、素直に病室に戻っていれば……こんな事にはならなかったかもしれない。
「……実は、今回の事で優花ちゃんに伝えとかなければいけない事があるの。」
「なんですか…?」
きっといい事ではない。
先生の表情と自分の体からそれだけは分かる。
「倒れたあとの検査結果から優花ちゃんの心臓は心不全…心臓の動きがだんだん悪くなってるの。この前の検査よりも。」
「……え……?」
「これまで心不全の治療はしてきているけれどあまり変化がなくてもう治療法がないの。今の治療を続けても良くならないと先生達で判断した。だから心臓移植が最も最適な治療になってくる。」
……それは予想してなかった。きっとまたこの前みたいにまた治療しないといけないとか薬を飲まないといけないとか、そんな事だと思ってたから。
「心臓移植……ですか……?」
「うん。心臓移植……。しっかり考えて決めて欲しいの。ご両親には何とか連絡をつけてお伝えはしといたけれどおばあさまとの方がいいかな…?」
「あ……、はい……。」
急に言われたことだから慌てながら答えると星川先生は少し暗い笑顔を残して看護師さんと部屋を出て行った。
「……心臓移植……。」
日和ちゃんがやった治療だよね……。
何か考えようとするけれど情報量が多くて何から考えたらいいのかも分からずぼーっとしたまま時間が過ぎていく。
先生の話によるとこの部屋で治療をしている間は樹くん達にも会えないみたい。
寂しいな……。
ふとそう思った。
その時、唯一顔を合わせることが出来るらしい面会用の窓にふっと人影がみえた。
誰かいる……?
そう思ってその窓を見つめていると下からひょこっと顔を出したのは樹くんだった。
「……!樹くん……?」
私が酸素マスクのこもった声でそう問いかけると大きく頷いた樹くん。
「優花…!良かった……。星川先生からさっき優花の目が覚めたって聞いたんだ。ほんとは来ちゃダメって言われたんだけど……体調大丈夫?」
「……うん。大丈夫。迷惑かけてごめんね……。」
「大丈夫だよ。気にしないの。あ、というか紘がいなくてごめんね。1人で来ちゃった。」
そう無邪気に笑った樹くんを見て私も笑顔がこぼれる。
「じゃあ、顔見に来ただけだから!先生にバレる前に戻りまーす。じゃね!また来る!」
「うん。ありがとう。樹くん。」
手を振り満面の笑みで戻って行った樹くん。
その顔を見て私は少し元気が出たような気がした。