君がいてくれて。

日和ちゃんが手術室に入ってから1時間が過ぎた。
手術室の外の廊下にあるソファで翠ちゃん達や樹くんたちと時計を見ながら持つ。
「……大丈夫かな……。」
翠ちゃんがそう言って体育座りをした足に顔を埋める。
「大丈夫。日和さんの事だし絶対に戻ってきます。」
紘くんがそう返すと翠ちゃんは小さな声で泣き出した。
その背中を紘くんがなでながら時間が過ぎる。
日和ちゃんの場合、補助人工心臓をつけていなかったから手術は5.6時間で終わる予定って星川先生は言ってたけれど時間が過ぎるのは遅い。
会話を切り出す人もいなくてただただ静かな空気が流れていた。
その空気の中、1時間、また1時間と過ぎて手術が始まってから4時間が過ぎた。
紘くんと日和ちゃんのお友達さん達はそれぞれ検査や治療の関係で戻ってしまいそこから30分経つと翠ちゃんも看護師さんに連れられて検査に行ってしまった。
「優花、戻らなくて大丈夫?今日一回も休んでないかさ……。体調悪くない?」
「うん。大丈夫。」
日和ちゃんが戻ってきてくれるまでは私もここを離れたくない。
なんでか分からないけど今日は体の調子がいい気がした。

手術が始まって7時間が経った頃、ぱっと手術中のライトが消えてドアがゆっくり開いた。
「終わった……?」
樹くんと2人で立ち上がると日和ちゃんが乗ったベットを押して看護師さん達が出てきた。
「日和ちゃん……!」
「星川先生!日和ちゃんは……。」
1番最後に出てきた星川先生に駆け寄るとびっくりしたように目を丸くするとマスクを外して優しく微笑んだ。
「優花ちゃんも樹くんもずっといたんだね。日和ちゃんの手術なら成功したよ。安心してね。」
その一言を聞いた時、私の中で何かがぷつんと切れる音がした。
「良かったっ……。」
「ちょっ、優花っ……!」
「優花ちゃん!?第1手術室前で急患!ストレッチャー持ってきて!
PHSに向かって叫んでいる先生を最後に段々と意識が遠のいていく。
体から力が抜けていくのを感じながら私は完全に意識を手放した。


*PHS…医師が病院内で使っている電話の事。
電波が非常に微弱なので医療機器に電波干渉
をしにくいため使用されている。