クズにはクズのやり方で

 本間くんは私の顔の近くに寄り、ニヤリと口角を上げていた。

「……なっ……」

 本間くんの目を見据えたら、プライベートの本間くんの顔があった。

「付箋見てくださいね。では、戻ります」

 本間くんは私の顔を見たまま後ずさりをして、営業スマイルを浮かべていた。

「………」

 自分のデスクに戻っていく本間くんの後ろ姿を見送った。

 デスクにある付箋を手に取り、中身を見た。

 そこに書かれていたのは、本間くんの連絡先だった。

 なんで本間くんが私に連絡先を渡すの。

 私と本間くんは職場の先輩と後輩。

 それ以上も以下もない。

 連絡先を渡すメリットは見当たらない。

 恋愛の好意とはまた別で、多分ただからかっているだけだと思う。

「なにもなかった…なにもなかった」

 私は自分に問いかけ、仕事へ励む。

 今日は久々に定時で帰れた。

 大体、二時間ほどの残業を毎日やっていたので、定時上がりが普通のことなのにそれすらも贅沢に感じる。

 「お疲れ様」と職員に言い、帰路につく。

「はぁ、今日も頑張ったわ。ああ…」

 右肩を左手でほぐしながら、エレベーターの階を下ボタンに押した。