「はぁ、京極さん。今の状況分かってますか。駅の中心で大人が少年のように泣いて、私がどんな目で見られたか分かりますか?」
私は顔を手で覆い被せて、ため息まじりに言う。
京極さんは目をウロウロさせて、すみませんと小さい声で俯いて呟く。
「…分かったならいいんですよ。まずは、私の家でゆっくりしてから帰ってください」
「はい……」
申し訳なさそうに言い、私の後をついてきた。
京極さんは鞄を両手で持ち、下を向いたまま私の家に入った。
「…っ…お邪魔します」
「はい。どうぞ、上がってください」
お客様用のスリッパを出してから、私はリビングへ向かうためにドアを開けた。
1LDKの家なのでリビングは広く、キッチンも広々としていて、一人暮らしにはもったいないほどの広さであった。
「驚いた? 広くて。私もう独り身かなって思って。思い切ってマンション買ったんですよ。いいでしょ? 私のマンション。フフフ」
私は鞄を椅子に置いてジャケットをソファーに投げつける。
「…いいですね。鳳凰さんらしい部屋で、モノトーンでしかも、お気に入りのもので溢れてる」
京極さんは両手に鞄を持ったまま、にんまりと微笑んだ。

