と口々で言っているのだろう。
声が聞こえなくても、サイレントのように声がしてくる。
「京極さん! 行きますよ」
居てもいられなくなり、私は京極さんの右手を握りしめた。
「鳳凰さん。どこ行くんですか」
手を握られて驚いているのか京極さんは急に心配そうな声をした。
私は先ほどよりも大きい声で言い放ち、周りの目は私を向いていた。
連れ出されているように見えるのか。
「かわいそう、なにあの女」
「男、女になんかされたんじゃない」
私の心の中で人とすれ違うたびに、そう聞こえてきた。
「あなたが泣いているから、どこかに避難するんです! 行きますよ!」
ため息を一つ吐いてから立ち止まり、勢いに任せて、声を飛ばした。
バキバキに目を光らせていたので、京極さんは反論も出来ずに「はい」としおれた声で言う。
京極さんと私は走って着いた先は、私の家だった。
「ここ家なので、上がっていてください」
オートロックのマンションで、部屋の番号を入力した。
「鳳凰さんの家にお邪魔していいんですか?」

