クズにはクズのやり方で

 そこには、泣きながら歩いている男性がいた。

 黒メガネをして、今でも砕けそうな人。

 明らかに、京極さんだった。

「京極さん?」

「鳳凰さん」

 京極さんは気づいたのか、顔を上げて呼んだ。

「鳳凰。おーい」

 呼びかけても声を発しない私に吉岡さんは声をかけるも声がしてこないので電話を切っていた。

「……なにしてるんですか、京極さん」

 駅の中で京極さんは一人歩きながら、泣いていた。

「…鳳凰さん。僕、彼女と話して分かったんです。僕たち、仲良く恋人でいたはずなのに、いつの間にかバラバラになっていたんです。僕はつなぎとめたくて、彼女と話しても分かり合えなかった。彼女は愛してくれる僕じゃなくて、仕事が出来て完璧な人といたいって。僕は結局、どうしようもない人間なんですよ」

 京極さんはずっと泣いていたのだろう。

 目が腫れて、赤くなっていた。

 駅の中心部で京極さんは少年のように泣いていた。

「京極さん。ここで泣くと人目があるので……」

 私は周りを見渡した。

 京極さんが泣いているのをちらりと覗いてる人がいた。

「なに泣いているのかしら」

「あの女が泣かせたのかな。嫌な女」