クズにはクズのやり方で

 
 佐藤は「はい」と返事をしてから、またパソコンと向き合っていた。

「分かりました。早く終わるようにします」

 本間くんは手を止めて、私の方に目を向けて答えた。

「よし、じゃあ明日も仕事あるから終わらせて早く帰ろう」

 顔周辺に右拳を作って、「お疲れ」と称えた。

 私は自販機に足を踏み出した。

 私が缶コーヒーを買って戻ってきた時には、佐藤はいなく、本間くん一人しか残っていなかった。

 黙ったまま私はデスクに戻り、仕事を再開した。

「…………」

 終始、本間くんと私は無言のまま仕事に励む。

 ふぅーと背伸びをしてから、本間くんの方を私は見た。

 まばたきもせずにパソコンに集中して作業をしていた。

 「さて、またやりますか」と私は意気込んで、缶コーヒーを一気に飲み干した。

 よし! と腕まくりをした瞬間、私の後ろから声がした。

「頑張ってますね」

 その声が近くに聞こえてきたので、後ろを振り返ると本間くんがいた。

 いつの間にか本間くんは私の背後にいた。

 さっきまで、自分のデスクにいなかった?

 足音もしなかったし、気配消せる能力もあるのか。