クズにはクズのやり方で

 
 私はまた仕事が忙しくなった。

「佐藤。これ、お願いしていい?」

 自分の仕事に加えて、佐藤に仕事をふるようになった。

 佐藤はそれに答えようと以前よりも増して、分からなかったら私に聞いて、仕事をやり遂げようとしていた。

 一方で、新人の本間くんは仕事を覚えようと、私や吉岡さんから教えてもらい、一つひとつ出来るようになっていた。

 相手の話を聞く力があるし、佐藤よりも仕事が速いのでむしろいてくれて助かっている。

 プライベートのことはさておき。

 仕事が出来るので、プライベートのことは口に出さない。

 私が恋愛クズだってことは、バレないようにしなくてはならない。

 職場で知られたら、私はもうここにはいられない。

 私を信頼している仲間がいる。

 その人たちに失望されたくない。

 どうしてもこれだけは、バレてはならない。

 そんなことを考えていたら、本間くんがキーボードを打つ手を止めて、私の方に顔を向けていた。

「………」

 私は首を傾げた。

 本間くんを見ると、そっぽを向いた。

 なんだ、なにか言いたげな様子だった。

 気のせいだったかな。

 私は再度首を傾げて、仕事へと戻った。

 一八時になり、退勤時間になった。

 私は残業が決定した。

 また仕事をするために、一旦缶コーヒーを買うために鞄の中から財布を取り出した。

 立ち上がり、周りを見渡した。

 まだ残っていたのは佐藤と本間くんだった。

「佐藤と本間くん。仕事は今日中じゃなければ明日でいいからね」

 私が財布を手にして、二人に声をかける。

「はい。これやれば終わるので、終わったら帰ります」

 佐藤はいつも以上に仕事に熱が入っているのか、目が真剣で終わらせる意思が以前よりも感じられる。

「…分かった。終わったら早く帰るのよ。本間くんもね」