「帰りましたよ。彼女と電話してからすぐに」
「あれ? 鳳凰ちゃん、なんか怒ってる?」
「怒るに決まってるじゃないですか。私、京極さんに呼ばれて来たのに。帰るんですから。怒りますよ。はぁ」
グラスを下さいと言い、マスターははいはいと優しくあしらい、私に声をかけた。
「…はい、グラス。京極くんはね、自分のことはあまり話さないタイプなんだよ」
マスターは買ってきた食材を腰をかがめて冷蔵庫に入れていた。
「そうですかね?」
「だから、鳳凰ちゃんにしか話せないことなんじゃないかな。だから、怒らないであげて。綾斗くんなりに自分でどうにかしようとしているんだよ」
ニコリと口角を上げてから、キッチンのテーブルに調味料を置いた。
「どうにかしようね……」
私は頬杖をついて、去っていた京極さんの背中を思い出した。
近くにあったレモン水をグラスに注いで、一口飲んだ。
私はマスターと少し話したら、家に戻った。
「はぁ、もうゆっくり休もう」
玄関の鍵を閉めて靴を脱ぎ、そのままバタンと倒れ込んだ。
お風呂入って着替えて、保湿しなくちゃいけないのに、そんな気力さえない。
疲れがピークに達した。

