クズにはクズのやり方で

 後輩の佐藤は片手にスマホを持ち、椅子を動かして、私のデスクに来る。

「なに?」

「これこれ。鳳凰さん、前、この写真見てましたよね。じゃあ、これ興味ありますか?」

 後輩の佐藤は覚えがよい。

 佐藤が私に見せてきたのは、ある芸能人のニュースであった。

 芸能人の推しではない。

 ニュースでは芸能人の結婚報告が載っていた。

 以前見ていた写真は、芸能人が友達とお酒を飲んでいる姿であった。

 それがなんだってと思うだろう。

 お酒を飲んでいる姿を見ると、私はにやけてしまう。

 私は大のお酒好きで、癒しは酒を飲んでいる姿を見ること。

 会社の人間にはそのことを言っていない。

「……ああ、その人結婚したんだ」

 椅子を後輩の佐藤の方に向けていたが、パソコンの方に振り向き直した。

「そうですよ。知らなかったんですか。いや…びっくりしましたよ。この前、人気女優と別れたばかりでしたよね。この人って決まったら、すぐ結婚したくなるもんなんですかね。羨ましいですよね。ねぇ、鳳凰さん。そう思いません?」  

 後輩の佐藤はデスクでパソコンと向き合う私に問いかける。

「…そうだね」