クズにはクズのやり方で

　前々から仕事の締め切りはギリギリで私が声をかけて、なんとか終わらせていた。

　今日は声をかけることすらしなかった。

　私の失態だ。

　私は愕然とした。

　頬杖をついて、自分を戒めるようにふぅと息を吐いた。

「分かった、佐藤。今日は帰って。今日の仕事分、私がやるから。私の仕事は今終わったから。佐藤が今日中の仕事、私の方によこして」

　デスクに置いていた缶コーヒーを一気に飲み干した。

　佐藤の方に振り向き、今日の仕事分を手渡すように右手でうんと寄こすよう促した。

「鳳凰さんも疲れてるのに、私の仕事までいいんですか？」

　佐藤は申し訳なさそうに私に謝ってはいるが、内心はラッキーと思っているはずだ。

「今日中な仕事だから早く終わらせないといけないし。佐藤だけでやらせるわけにはいかないから。私が処理しておくから。帰りな」

　私は立っている佐藤にニコリと微笑んで、書類を渡すように右手でまた促す。

「はい。今日中の仕事です。ありがとうございます」

　佐藤は両手を抱えた書類を私に「はい、お願いします」と真顔で言う。

　疲れ切っていた表情から満面な笑みを浮かべていた。