クズにはクズのやり方で

「…了解しました。じゃあ、僕帰ります。明日もよろしくお願い致します」

 本間くんは椅子から立ち上がった。

急いで仕事をしていたものを片付けて、リュックを背中に背負い、礼をして帰っていた。

「…ふぅ」

 私は一息呼吸を整えてから、仕事へ戻った。

「鳳凰さん」

「どうしたの?」

 佐藤もまだ残業していた。

 もう時間は二二時を回っている。

「佐藤。こんな時間だから帰ったら?」

「いや…帰りたいですけど。まだこんなにありますし。今日中なものもあるんですもん」

「佐藤。今なんて言った?」

 キーボードで打つ手を止めて、私は佐藤がいるデスクに振り向く。

「え? 今日中の仕事あるってことですか?」

「そう。え? まだ終わってないの」

「終わんないんですもん」

 なんてことだ。

 新しく入ってきた本間くんの指導と自分の仕事で頭いっぱいで佐藤のことまで気に留めていなかった。

「………はぁ、佐藤…」

 頭を抱えて、髪を手でぐしゃぐしゃにして考え込む。

「なんですか?」

 今日中の仕事なのになんでこんな平然としていられるのだろうか。

 焦りというのはないのか。