クズにはクズのやり方で

「そんな完璧って言葉で終わらせてほしくないな。私、そんな人じゃないし。京極さんの方が人としていい人だと思うんだけどね」

 私は深夜の暗いトンネルを潜り抜けて、家路へと向かう。

 暗闇の中は何も見えない。

 京極さんには今まで通りに彼女想いでいてほしい。

 仕事がクズでも素敵な一面があるのは本当なのだから。

 仕事と恋愛の両立は学生の頃よりも難しく、年を重ねるほど、より難しさが増える。

 どちらかが片方でもできればいいのではないかと思えてきた。

 ないものを求めてしまうのは、今あるものが日常になっているからなのかもしれない。

 クズはクズでも、いろんなクズがいる。

「アハハアハハ」

 誰もいない通り道で私は一人笑い続けた。

 笑うことで、今の気持ちを消せるから。

 この時までは、笑えたからよかった。

 私とは違うクズが現れて、笑うのもためらってしまうほど、余裕はなかった。

 想像もしていなかったことが起きる。


「えー、今日から新しく入りました。新人くんです」
 吉岡さんが新しく来た新人をみんなに紹介した。