クズにはクズのやり方で

「…当たり前って、贅沢だよね」

 グラスを片手で持ち、上にあげて私はぽつりと前を見つめたまま呟く。

「贅沢?」

 京極さんは首を傾げた。

「…そうです。当たり前のことって、日常で起きるじゃないですか。日常での積み重ねでそれが当たり前になって、習慣になる。いつもと違うことをすれば、それは刺激にもなりえる。でも、それは難しいと思うんです。当たり前の生活をどうしていきたいかを考えるしかないのかなって思うんです」

 私は言ったあとにグラスをテーブルに優しく置いた。

 京極さんは私を見てから、オーナーにいる方へ向き直した。

「そういう考え方もあるんですね。鳳凰さんって素敵な考え方するんですね。すごいな」

 ため息を吐いてから、またカクテルを一口飲み、京極さんは下を向いた。

「なに、落ち込んでるんですか?」

 おいおいと京極さんにツッコミをしてから、背中をバンと叩いた。

「落ち込みますよ。そりゃ。鳳凰さんみたいな考え方出来ればいいのに。僕はほんとに情けないな」

 京極さんは前髪をかき分けて、眼鏡をくいっと上げた。

 オーナーは忙しく動いていた。