クズにはクズのやり方で

「よかった。今日、初挑戦してみたんだ。肉巻きアスパラ。少し味も濃いめにしてみたんだ、桜ちゃん、どう？」

「美味しいよ、いつも味工夫してくれてるから、毎日食べても新鮮でいいね。京ちゃん、料理人になったら？」

　頬に詰めたものを噛んで、桜ちゃんは僕の反応を見た。

「……うーん、そこまでプロになりたいとは思わないかな。今も幸せだし」

　僕は肉巻きアスパラを箸で掴み、口に入れる。

「…うん、美味しい！　よくできたかな。また、作ってみるね」

「ありがとう、京ちゃん。本当にどれも美味しい。本当ありがとう」

　桜ちゃんは僕に感謝した。

　僕は桜ちゃんに礼を言われる瞬間が、一番好きだ。

　桜ちゃんは笑うと、目尻に皺が出来て、白い歯が鮮明に見える。

　幸せそうに笑う桜ちゃんが好きだ。

「……桜ちゃん。お風呂も入れるようにしておくからゆっくり休んで」

「うん、ありがとう。じゃあ、ゆっくりしてるね。いつも、ありがとう」

　桜ちゃんは食べた食器をキッチンの流し台に置き、ソファーに横になった。

　寝転びながら、小さなテーブルにあるリモコンを右手で探していた。