クズにはクズのやり方で

「今日も終わった。特に何もなかったけど」

 僕は仕事がなくても、特に気にしない。

 会社に入社して七年目。

 入社当時は仕事はしていたが、徐々に出来なさが目立ってきて、仕事がなくなった。

 今日は上司が気を利かして、仕事を回してくれた。

 やはり出来ないことが分かり、もうどうしようもないと上司は僕のことを諦めた。

 僕は空を仰いで、雲が動いているのをただじっーと見た。

 それを見ると、世界は回っていると気づく。

「よし、帰るか」

 僕は一歩を踏み出して、彼女の家に向かう。

 彼女とは十年の付き合いだ。

 学生時代から付き合い始めて、同棲して、五年になる。

 そんな月日が流れたが、特に彼女との関係は変わらなかった。

「ただいま」

 玄関で物音がしたので行ってみると、桜ちゃんがいた。

「あ、おかえり。桜ちゃん」

「……うん。今日先方がさ、色々要望言ってきて…それに対応するの疲れたよ」 

 玄関先で倒れこんでいる桜ちゃんの頭を右手で頭を撫でた。

 靴を脱いで、立ち上がろうとする桜ちゃんの右脇を掴み、起き上がらせる。