クズにはクズのやり方で

 
 僕、京極綾人(きょうごくあやと)は会社内ではゴミ扱いだ。

「京極! この資料はなんだ! まだできないのか」 

 僕の上司は資料を丸めて、僕のデスクに叩きつける。

「…すみません。まだ、できてません。一生懸命頑張っていますが、これくらいしかできなくて」

 上司は天井を見上げてから、丸めた資料を持ち、両手に腰をつけていた。

「業務時間すべてを使ってこれ…」

 僕は上司からある会社の資料をまとめておいてと言われて、仕事をしていた。

 だが、半分しかまとめることができなかった。

 上司は仕事ができないと分かっていても、これくらいはできるだろうと過信した。

 僕が思っていたよりも出来なかったので、上司はため息が倍になっていた。

「…はぁ、もういいや。加藤さん、これやっておいて」

 隣のデスクの加藤に僕の仕事を任せた。

「………っ…」

 僕は黙ったまま、デスクに座っていた。

 ただ真っ直ぐに姿勢を伸ばして。

 終業時間になったら、僕は立ち上がった。

 パソコンの電源を消して、退勤した。

 それ以降、仕事はなく、ただ座っているだけだった。