私はあれ以来、京極さんとは会っていない。
会っても何を話したらいいか分からない。
「お疲れ様です。鳳凰さん、これなんですけど」
後輩の佐藤が私に声をかけてきた。
なんだろう。また、なんかやらかしたか。
佐藤から資料を渡されて、見ると企画書だった。
「これ、佐藤が作ったの。すごいじゃない。初めてじゃない。吉岡さんに言われたの?」
ここの職場は先輩も後輩も関係なく、自分のアイデアで企画書を出せる。
それが形になり、会社の宣伝になる。
「いえ、私が書きたいと思ったんです。これ、どうですかね?」
「まだ、少ししか見ていないけど、いいと思うよ。私も見ておくから」
私は企画書を上にあげて、ありがとうと感謝を伝えた。
「…っ…ありがとうございます。あと、私、彼氏できました!」
佐藤は深々と礼をしてから、嬉しそうに彼氏が出来た報告をした。
「そうなんだ。おめでとう。よかったね」
「はい。好きなんですよね、彼氏のこと。だから、仕事もやる気が出てきたんです」

