王子様を助けたら子供を授かり溺愛されてどこまでも追いかけてくる件

ルカは何とか立ち上がり肩を落として自分の部屋に向かった。部屋の前にヨンが待っていた。

「殿下、どうでした。国王は王位継承権を放棄して市井に下る事を許して下さいましたか?」

「ボルドが、僕に補佐や宰相になれって言うんだそうすれば王になってもいいって…結局僕がリーナの隣にいてやる事はできないんだ」

「でもそれなら継承権は放棄して公爵に降下されれば王都に屋敷を構えてサオリーナ様を呼べますよね」

「お前もボルドと同じことを言うんだな。リーナが公爵夫人になんてなってくれる気がしない」

ヨンはまだ顔色が悪いルカを心配してドアを開けて、部屋の中にルカを通した。

はーっとなんとも物悲しく深いため息をついてルカは部屋に入ってソファーに腰かけて目を瞑って何事か考え始めたようだ。

ヨンはこんなにも殿下がサオリーナに執着して溺愛しているとは思わなかったのだ。

きっと国に帰って城に戻ればいつもの殿下に戻ってくれると思っていたのだ。

第1王子と第3王子がお互いが差し向けた刺客に暗殺されてしまって、あっけなく王太子争いに決着がついたとヨンに知らせが入ったが、その時点ではルカを探し出せていなかったのだ。

でもヨンは絶対殿下は生きていると信じていた。大きな川の流れはそんなに早くはない。おぼれて死んでいれば必ず死体は上がるはずなのだ。

ヨン達近衛騎士団は総力を挙げて川の支流になる町や村をルカの絵姿を持って捜し歩いたのだ。

そしてやっと見つけた殿下は何とも満ち足りて幸せそうな様子でフォブル村の小さなカフェで働いていた。

そして絶対に帰らないと言い張って死んだものとして欲しいとまで行ったのだ。

今まで自分のわがままを通すことなく第1王子の補佐に回るのを当たり前のように思っていた殿下は、物静かで大きな声を上げずいつも周りの皆の事を気遣ってくれる優しい殿下だったのだ。

それなのにサオリーナ様の事は絶対にあきらめようとしなかった。

王宮を抜け出してフォブル村のお店に行ってそこにもういない事が分かった時の殿下の絶望に青ざめた顔と荒れた様子に、ヨンは自分が間違ったことをしてしまったのを痛感した。

サオリーナ様に店を売って欲しいと言われた時にきちんと殿下の耳に入れるべきだったのだ。

いやその前に二人の手紙を握りつぶしたのがそもそもの間違いだったのだ。それも自分で勝手に判断した結果だ。