王子様を助けたら子供を授かり溺愛されてどこまでも追いかけてくる件

ルカは服を買わなければならずまだ店が開くには早すぎるので、川辺で拾った枝を集めて火魔法で焚火をして暖を取った。

はやる気持ちはあるが久しぶりの再会でずぶぬれはないだろう。きっとサオリーナが心配する。

陽も昇り服も衣料品店で買って着替えたルカは、意気揚々とサオリーナのカフェに向かったカフェはそのままそこにあったが、ルカの書いた看板の名前が違っている”フォブルカフェ“となっていたのだ。

ルカは半信半疑で店のドアを開けた。中には中年の男がコック帽をかぶりレジの横にスイーツを並べていた。店の中はほとんど変わっていない。

「すみません。サオリーナを呼んでいただけませんか?」

恐る恐る尋ねるルカにその男は

「ええっ、サオリーナって前の持ち主だな。もういないよ。ここは俺が買ったんだ。隣国のヨン何たらというやたら長い名前の男が仲介してくれてね。彼女は俺にカレーの調合まで教えてくれて助かったよ。カレーライスは飛ぶように売れてお米も定期的に届けられるし最高の買い物をしたよ。サオリーナに会ったらよくお礼を言っておいてもらえないか?村の人も皆喜んできてくれるしな」

ルカは最後まで聞いていなかった“リーナはもうここにいないという事だ。ヨンめ!殺してやる。僕のサオリーナをどこに隠してしまったんだ“

ルカは近くの林のシャリの木の根元に座り込んで放心していた。

サオリーナに頼まれてこの木に登って葉っぱや実を取った。2回目に登った時には天辺の方にしか赤い葉っぱがなくて昇って行ったら、下でサオリーナが危ないと言って大騒ぎしていた。

二人きりの楽しい時間だった。そしてその日初めてサオリーナと結ばれたのだ。

“リーナの明るく屈託のない笑顔、真剣に料理に取り組む凛とした横顔、フォブル村の住民の為に薬師になってみんなに安く薬を分けていた優しいリーナ、僕の腕の中で蕩けたようになって眠るリーナ、リーナの肌のにおいが今でも鼻をくすぐる。会いたい、会いたい、どこにいるんだリーナ”頭を膝にのせて無力感に苛まれていた。

「殿下」と呼ぶ声、ヨンだ。

ルカはさっと立ち上がると前に蹲るヨンの胸倉を捕まえて引っ張り上げた。