王子様を助けたら子供を授かり溺愛されてどこまでも追いかけてくる件

サオリーナは、店の名前を“シャリの木”とした。

いつまでもルカが忘れられない自分が情けないが、ルカとの一番の思い出はやはりシャリの木に登るルカの姿なのだ。

天辺近くまで登ってきらきらとお日様に金髪が揺れて下で心配するサオリーナに手を振るルカのはじけるような笑い顔が頭から離れてくれないのだ。

”ああ、ルカに会いたい“そして抱きしめて欲しい。ルカの均整の取れた肢体を思い出すと腹の底がうずく厚い胸板にしっかりと割れた腹筋、そしてサオリーナの大好きな色っぽい眼元、リーナと呼ぶちょっと低い声に胸を震わせた。

想っても二度と会えない人…それを覚悟でマリアと二人王都迄逃げてきたのだ。

今はこの小さな命を守り無事にこの世に送り出さなければならない。弱音を吐いている場合ではないのだ。

サオリーナは顔を上げて自分の思念を振り切るように、両手で頬をパンと叩いて活を入れた。そうして薬作りに精を出す。

王都は水が良くないのかお腹を下す人が異常に多いそのために腹下しを止める薬や腹痛の薬などが毎日作っても在庫がなくなっていくのだ。

サオリーナはとマリアは水道から出る水は洗い物くらいにしか使わない。いつもサオリーナが魔法で出した水を料理や飲み水にも使うのでわからなかったが、水道の水を飲むのはよくないのかもしれない。

これはみんなに注意喚起する必要がある。サオリーナは水道の水はそのまま飲まないように必ず一度煮沸したものを覚まして飲むようにと書いたメモを、マリアに何枚か用意してもらってお客様がきたらそのメモをつけて渡すようにした。

特に腹下しや腹痛の人には丁寧に教えた。できれば料理にも煮沸した水を使った方がいいと教えた。

それを毎日繰り返し1ケ月ほど過ぎると腹下しや腹痛の患者は少なくなってきた。やはり水道の水は充分にろ過できていないのだ。

今度役所の人が視察に来た時に話してみようと思う。きっと他の所でも同じようにお腹を壊す人が多いのではないかと思っていた。

その担当者も来るたびに大量の腹下しの薬を買っていくのだ。

毎月一度視察に来る役所の担当者に水道の事を伝えると、それは大変な事だと帰って上司に報告すると言ってくれた。

彼にも水道の水は直接飲まずに煮沸して冷ましたものを飲むようにと書いた注意書きを渡した。

サオリーナは水道をガラスコップに入れてしばらく置いておいたものを担当の人に見せた。ガラスの底に沈殿物が見える。