王子様を助けたら子供を授かり溺愛されてどこまでも追いかけてくる件

思わずその大木を見上げると陽の光が降り注ぎ高揚した葉っぱが真っ赤に透けて見える。

少し離れて大木を見ると、周りの木々の中でその1本だけが真っ赤に燃えてそびえ立っていた。

しばらく呆けたように見つめていたサオリーナは、ほ~っと息を吐きだした。

自分は無意識に息を止めて見入っていたようだ。

この大木はいつからここにいるのだろう。

きっとサオリーナがこの世界に落っこちてきた何十年も前から、ここで秋になると葉っぱを紅葉させて皆を楽しませているのだろう。

この場所でず~っと沢山の人の人生を見てきたに違いない。

10年前8歳になってこの世界に落ちてきたサオリーナは、幸運な事に優しい老夫婦に拾われてこうして今も生きている。

18歳になったんだから、一人でも生きていけるはずだ。

幸いにも二人は家も畑も持てる物全てをサオリーナに遺してくれた。

村役場でそのように手続きがされているらしかった。

本当に二人には感謝しかない。

いつまでも悲しみに沈んで一人で途方に暮れているわけにはいかない。

サオリーナは、マリアの暮らしも考えてやらなければいけないのだ。

2人を失ってマリアとサオリーナだけでは食堂と薬屋を両方やってはいけないだろう。畑もあるのだ。

この先生きていくためにどうすればいいのか考えなければいけないと思い、少し遠回りをして、小川のほとりを散歩して帰ろうと川に向かった。

この川は大きな川の支流になる。結構川幅もあり、深さもあるようだ。

もう辺りは暗くなり始めていた秋の日は短い。