『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


俺は自分が乗ってきた宇宙船を整備する。
俺が作った船。この世界を探すために。
宇宙船も珍しくない時代。
安価に作れて、一般家庭でも手が出せる代物。
俺たちの世界は貪欲にも宇宙に住める星を探し、各国が代表者を決めて宇宙を旅をした。
俺の目的は違う。

魔王討伐前の最後の晩餐。
高揚する。
ゲームじゃない。
分かっているさ。この世界が消滅するかの瀬戸際。
でも神様の干渉があって、この世界は未来を回避してきた。
楽観視するなと言われても。
晩餐の静けさを見ても、悲観するような恋人たちの表情も。
俺にとっては現実ではなかった。

なかなか寝付けず、朝日が昇る。
朝食を終え、一気に張り詰める空気。
俺も、用意された鎧や装備を黙々と身に着けていく。
重く圧し掛かるような沈黙。
魔法で見た過去。繰り返した日々、冒険に参加した者たち。
向かった先は、外ではなく長く続く螺旋階段。
最下層。それはまるでボスダンジョン。
二つの仲睦まじく並んだ像。
そこに向かったのはオリアンヌとロレイン。
足台に置かれた星形の、ゲームクリアには必須のアイテム。
それを手にしたのはオリアンヌ。
すると眩い光に包まれて、背に羽が生えた。
まるで女神レイラリュシエンヌ様。
ロレインの手には、黒い星形のアイテム。
それはじわじわと闇を生み出して、ロレインにまとわりつき。
背中に羽を形作っていく。まるでその姿は。
「ロレイン、あなたは私が殺す。」
「……オリアンヌ、最期だ。名前を呼んでくれ。レイラリュシエンヌ、何故、転生してその役目を負った?」
「リューテサッセウス。あなたを愛していたから。誰にも譲らない。私があなたを殺して、私も死ぬ。あなたが私を殺すなら、私はそれを望む。」
何が起こっているのか分からなかった。
聖女と魔王が恋仲。
殺し合い。聖女は生贄。
「オリアンヌ!約束が違う!!」
叫んだガーネットを留めるのは、勇者ジークハルト。
「いやよ、もう失うのは嫌だからここに来たの。ジークハルト、あなたは私の味方でしょ?」
「君さえ無事なら、俺が二人を殺す。恨まれても。それが、俺の役目だ。ガーネット、君だって分かって来たんだよね?」
ゲームの主要人物。王子ユーリス、側近騎士フリック、聖女エルティナ。神官ライオネル。レジェス先生。
転移者の魔法使いマリー。転生者のユミアミ。全て部外者だった。
これはゲームじゃない。
世界の理。誰の理解も望まない。
俺がここに来た意味は。

「人では償う事など出来ない。この星の管理者、レイラリュシエンヌとリューテサッセウスは存在の消滅を持って。この星と共に消える。言葉には力がある。願いは神のご意思に反し。何度となく繰り返して未来を望んだ結果。誰かを守り。誰かの為に生き。命を懸けて。死を望んだ。」

全ては無に帰す。
終焉





to be continued?