俺の名前は、田中 地球(たなか そら)。
未来から来た。
だから知っている。リセは聖女ではないと。
この未来、宇宙の果てに連れてこられたリセ。
彼女が目にした世界。それを模したゲーム。
リセが召喚された時、そのゲームは存在しない。
何故ならリセは地球に帰って、夢だったゲーム制作に携わり。
出来上がったのが『レティッシラの聖女~女神の加護を受けし者は世界を救う~』。
何故、召喚の対象になったのか。
それは未来回避をするユニアミに情報を伝えるためだ。
神の領域。そう。何故、過去から連れてきたのか。
一度きりの召喚。知識もないリセを。
全ては、この世界を救うため。
タイトルはリセの魂に刻まれていたのだろう。
魔法使いマリーから聞いた時には記憶にあるタイトルだと認識した。
けれど元の世界に戻ったリセは、そのゲームが存在しないことを知る。
作るのは自分だと。
転移者と転生者。
確実に、シナリオを記憶した世界を救う者が奮闘する。
この世界を救うために。
それなら俺の役目は。
ゲームに登場しない人達が誰なのか。
「ソラ、そろそろ魔法の効果が切れる時間だ。起きているか?」
寝返りをして、片足を布団から出す。
両腕を上方に伸ばして、欠伸。
涙を拭うようにして目を擦りながら、身を起こす。
俺を起こしに来たのは、側近の騎士フリック。
「一気に情報が入って、頭がパンクしそうだよ。」
「熱は出すなよ。明日、魔王の討伐を行う事が決定した。」
そんなタイミングで登場した俺。
その役割は。
「討伐を、お前も見るか?」
「あぁ。この世界は救われるさ。そうじゃなきゃ繰り返す意味がない。」
ループする意味。
神の領域からの干渉。これは世界の終末記。
それならば、この異界世紀末は乗り越えられると信じる。俺は。
「先に言っておく。これはゲームじゃない。現実だ。この世界の理。誰の理解も求めない。」
ゲームじゃない。
それは一連の繰り返しを見てきたから分かる。
「もう繰り返すことがない。リセットできない。ゲームではないから。」
その意味が、俺には分からなかった。
一度、この世界で死んだリセがループにより生き返り。
元の世界で、この世界を模したゲームを作り。
運命に導かれたゲームを知り尽くした転移者と転生者。
何度も死を繰り返して、聖女リセのように生きることを願ったエルティナの覚悟も決まった。
生贄。それは。
