『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


そう聖女が選んだ人選。
王子の俺と側近の騎士フリック。それに魔法を教えるレジェス先生。神官のライオネル。勇者のジークハルト。
毎回、揃う事はなく。魔法使いマリー。女騎士のオリアンヌ。その双子の姉、ガーネット。
料理人として付いて来てくれるユニアミ。
勇者としてジークハルトではなく、ユニアミの兄ロレインが選ばれることもあり。
魔王討伐の人数は増えている。
その意味は。

俺は城から城下町を眺める。
そして広がる世界を見つめ。
「フリック、君にとっての聖女は誰?」
「リセ様だけです。」
「君は、リセ以外の聖女を覚えているか。」
「聖女候補、エルティナ様ですか?それとも希少な双子の妹、オリアンヌ様か。」
やはり、フリックの記憶にもない聖女。
それが一体、誰なのか。知る必要があるのかもしれない。
「ユニアミ。実は、君に話しておかなければいけないことがある。近々、王の招集もあるだろう。その前に、君に知って欲しい。そして君の知っていることがあれば、俺に教えてくれないか。」
「分かったわ。」
俺は何度か、同じ時を繰り返しているのだと告げた。
そして繰り返しの発端。名も知らない聖女のことを。
「……それってゲームの事?ちょっと待って。」
ユニアミは混乱しているのか、説明できる言葉を探しているのか。
青ざめ。一言。
「私は、転生者。ここは乙女ゲーム『レティッシラの聖女~女神の加護を受けし者は世界を救う~』と同じ世界。何を言っているのか、理解してもらえないと思う。けれど、そこに含まれた物語を参考に私は病の蔓延を回避した。未来を知ることが出来たから。信じてもらえるかわからないけれど。『ステータスオープン』。これは見えるかな。」
指さす先には何も見えず。首を振る。
フリックも同じ。
「そう。じゃあ。まだこの世界にはないミスリルを出すわ。これは、魔王討伐に向かう道中で手に入れる物。」
そう言って、何もない空間から取り出したのは。
繰り返された冒険で手に入れた記憶にあるミスリル。
まだ冒険に出ていない俺たちが手にしていない物。
「それで、ユニアミ。聖女の事、何か分かるか?」
「どう説明したらいいかな。聖女はゲームプレイヤーであって、名前はない。選択肢で未来は変化するけれど、決まったシナリオにそって進む。だからこの世界を救えるアイテムが存在して、それさえあれば終わり。魔王も簡単に倒せてしまう。」
けれど。その聖女は世界を救わなかった。
その意図は。