『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


何度と繰り返してきた。
その度に、記憶が蓄積されていく。
周りは忘れて、違う未来を自然と受け入れる。
けれど、記憶がある俺は。
何故、彼女に夢中になったのか。それが思い出せない。
召喚された聖女。
リセとは違う。
記憶の順番が正しいのかは分からない。
けれど、それが始まりには違いない。
リセとは違った。
魅力的で、婚約者のエルティナが彼女に嫉妬してしまうのも当然。
今思えば。聖女リセとは比べ物にならない。
自分勝手で努力もせず、俺達から与えられて当然のように振る舞い。
聖女に相応しくなかった。
それでも適性があり、蔓延した病を鎮めることに成功した。
けれど。それも、分かっていたなら。
ユニアミは、この世界を救った。
蔓延自体を食い止めた。利益も求めず、自分が救ったのだと公言もせず。
出来ることをして。
知識を分け与え、魔法が使えないと分かっても。
聖女の適性がないと知っても。
彼女が変わることはなかった。むしろ向上心の赴くまま。

エルティナも、同じ。
繰り返す中、君は何度も俺から逃げた。
時に家に引きこもり。命を自分から捨て。
だから聖女見習いに立候補した時は疑ったよ。
俺にとっては、嫉妬して何をするか分からない女だとしか思えなかった。
君が見ていたのは俺じゃなかった。
常にこの国の民の幸せを願っていたんだ。
君も出来ることを探していた。
繰り返す原因だと判明すれば、殺されることもあった。
俺は。

「ユーリス。一緒に行くわ、私も。」
何度となく繰り返すうち、迷いしかない俺に優しく寄り添ってくれたのはユニアミだった。
「ユニアミ、俺は優柔不断なんだ。迷いがある。」
「そんなの当然よ。誰だって同じ。」
同じ。違う、俺に出来ることがあるなど考えない。
「あなたは未来、この国の王になる。魔王を討伐して、民を。この世界を救う。」
「それは、聖女や勇者がすればいい。」
「駄目よ。あなたは討伐に行かないと。でも死んでも駄目よ。死なせないわ。私が、必ずあなたを救う。この世界も。」
あぁ。俺にとっての聖女は君だ。ユニアミ。
君を死なせたくない。だけど置いては行けない。俺は弱いから。
「ほら、見て。フリックも一緒よ。何の不満があるの?」
フリックに目を向けると、穏やかに微笑む。
フリックは、聖女リセしか見ていないよ。もう二度と会えないのだと理解していても。
リセが居たら、迷わず俺を見捨てて彼女を救っただろう。命を懸けて。
俺には、それが出来るだろうか。
「ユニアミ、俺の妃になってくれる?」
望んだ俺に、ユニアミも穏やかに微笑む。
「この世界を救うのは、あなたよ。ユーリス。」
その意味が分かっていなかったんだ。ずっと。
勇者が居て。聖女が居て。