『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


私は聖女見習いに立候補し、神官ライオネル様の元でまた学ぶ。
「聖女エルティナよ。」
「ライオネル様、まだ私は見習いですよ。」
そう答えると、ライオネル様は少し口元を緩め。
「私にとって、聖女はあなた一人だと告げたのを覚えておられるでしょうか。」
覚えている。決して忘れない。
けれど。
「いいえ、私の中で聖女はリセ様だけです。誰が、何と言おうと。だから。あなたには聖女と呼ばれるより、ただの見習いエルティナでいさせてください。」
聖女は生贄。私のこの恋心は、永遠に叶わない。
あなたの為にも命を懸ける。あなたはこの国の神官。未来を担う一人だから。
「私を守って死ぬなど、決して言わないでくださいね。」
ライオネル様は口を閉ざし、私をじっと見つめ。
「わかりました。」
表情の読めない顔。
それでいい。
「エルティナ、ギルドからの報告がありました。ユニアミとロレインの父、そして勇者ジークハルトの父親を含め、冒険者数名を無事保護。火災による被害は最小限に止めることに成功したとの事です。」
火災は必要。
魔法使いマリーには悪いけど、少しのトラウマは我慢してもらわないと。
転移者だからか、マリーにはループの記憶が残ることがなかった。
私にしても、残ることが希少。
全てを覚えていたのが王子ユーリス。
私の願いの元凶だからか。それも神の領域。
「今回の未来回避、ユニアミの全面支援を行うように。」
ユニアミしか知らない方法。所持できない種。
それは聖女リセ様からの支援。
「エルティナ、あなたが望むのはユーリスなのですか?」
「いいえ、私が望むのは国民の未来。ユーリスには、挫けている暇など与えてあげないわ。贅沢よ。望む者を常に隣にいるようにしているのですから。」
ユーリスはこの国の王に相応しい。
本当に国民の事を優先できる女性を見つけたのだから。
幾度と繰り返し、記憶に残る中。手放してあげることもできるのに。
ユニアミが、この世界で生きることを望むから。
私は聖女として生贄に相応しいだろうか。
罪を償う必要がある。許されない罪を犯し。
ライオネル様は神官。女神レイラリュシエンヌ様に使える。
人として転生したのなら、オリアンヌ様の元で仕えたいのではないのかしら。