『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


王との謁見を終え。
食事を勧められて、場所を移動した。
ゲームで見た光景。
大きな机に、様々な料理が並び。見た事のあるお菓子や、昔のリセ時代の料理。
まさか、こんな形で食べることになるとは。
会議に参加していた人も来ると言っていた。
ゲームで見た人も当然いるだろう。そして女神から転生した人も。
ドアが開き、次々に入ってくる人。
会釈に応じ。椅子に座るように勧められたので、席に着く。

「冷めないうちに、どうぞ。遠慮なく食べてください、ソラ。」
王子だろう。その隣にいるのは、婚約者?
スチルとは違うような。
「私はユーリス、隣に居るのは婚約者ユニアミ。この並んだ料理のレシピを考案した者だ。」
この料理を。外見は明らかに日本人ではない。
この世界の住人。転生者。
「後ろで待機しているのは、さっきソラと一緒に居たフリック。この国の騎士。他の者の紹介は、食べ終わった後にしよう。会議に、君も参加して欲しいからね。」
俺は料理を口に運び、味わう。
美味しい。俺達が過去に失ったもの。それがここにある。その意味は。
俺に出来る事。
後でユニアミからレシピをもらおう。
きっと俺たちの世界の未来を変える。ここに来た意味。
リセは一度、この世界で死んだ。
ゲームじゃない。俺は。

食事を終え、会議の場所に誘導される。
その道のり、移動する人達を観察する。女神から転生したのは誰だろうか。
背中を走る寒気。
足を止め、視線の感じるその場に目を向けるのも戸惑う。
「おい、リセ様の子孫に何かしたら許さないからな。」
「ん?ふふ。牽制は必要かな、と。」
牽制ってレベルじゃない殺気。
女性の注意のおかげか、和らいだけれど。
今後に注意が必要かと、恐る恐る目を向ける。
当然、こちらを睨んでいただろう。
目が合って、思いっきり逸らす。
ゲームの登場人物にはいない。視界の端に見えた女性も、見覚えがない。

会議の一室に入り。
目の前が急に暗くなるのを感じ。
俺はそのまま意識を失った。

料理に何か入っていたのだろうか……
この世界、俺は部外者だから?
この世界を救えずに死んだリセは、最期に何を考えただろうか。
ゲーム作成に携わり、シナリオを書いた。彼女の夢は叶ったのだと。
エンディングの最後に流れた。
彼女の記憶は、この世界レティッシラを救ったのだと。
生き残って、元の世界に戻ったのだと。後世に残っている。
実際は違った。
クリア必須のアイテムでは、この世界は救えなかったことになる。
魔法使いマリーが持っていたアイテム。それは。
この世界を救えなかったのだとすれば。
救えるのは。