『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


俺の登場により、会議が一時中断。
魔王討伐が失敗すれば、またループしてしまう可能性もあるというのに。
そもそも、何故ループするのか。
いや、時間軸を歪めたのは、リセの召喚。
宇宙船による時間干渉。

「待たせてすまない。君が聖女リセの子孫と聞いた。」
王との謁見。
しかし俺はこの世界の人間ではなく、被害者遺族。
リセが生きているから俺がいる。
もしループの中に死んだ世界があるなら、俺は存在しない。
「あぁ、失礼承知で言わせてもらう。時間に干渉した責任を、どうとるつもりだ?」
「この世界の消滅。それが神の望む結末であれば、滅びをもって償うことになるだろう。」
異界世紀末。それは神に抗って世界を救うということか?
「この世界は、女神レイラリュシエンヌ様の加護を受けた者が救うのでは?」
それがゲームの根幹。
リセの記したシナリオ。アイテム一つで覆る。
「女神レイラリュシエンヌ様は人に転生し、この世界にいる。当人が聖女ではないと言うのだ。……繰り返されるこの時間を、共に生き。魔王が何なのか。最後の聖女が誰なのか。きっと今回で終わりを迎えるだろう。」
王は表情暗く。言葉を連ねていく。
そのどれも、俺には理解できない事だった。
アイテム一つでゲームクリアできるヌルゲー。それは。
この現実とはかけ離れたもの。
女神が人に転生して、存在する?加護を与える立場が。
人になれば、加護は?この世界を救う聖女ではない。ここにリセはいない。
何度か繰り返す中。この世界が滅ぶなら。星が消滅するなら。
魔王とは何だ?
「そなたの怒りは当然だ。一度、リセはこの世界で死んだのだから。申し訳ないと思っている。学園で魔術を教えていたレジェスが、リセに加護の魔法を与えていたのだ。そのおかげで、リセの元の世界と切り離され……」
あぁ。あの額にキスを受けていたのは。
あれはリセを、この世界から切り離すためだったのか。
この世界を救う為なら、どんな手を使っても。
それは誰しも願う事。
誰かを犠牲にしても。それが魔王なのか聖女なのか。女神なのか。
俺には何が出来るだろうか。
「王よ、一度はこの世界の聖女になったリセ。その子孫として、何が出来るだろうか。ここに来られたのも、何かの縁。運命の歯車になるだろうか。」
「きっとなるだろう。リセは選ばれた聖女なのだから。」
誰に選ばれたのだろうか。
女神レイラリュシエンヌ様が人になっているなら。
神はこの世界、星を消滅させようとしているのなら。
繰り返す意味は。
世紀末を超えるエンディングがあるのかもしれない。