『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


宇宙船から降り立ち、伸びをする。
まぁ、ケンカ上等で目立つ場所に着地したのだけど。
周りを取り囲む兵。緊急招集で来たって感じのまだ少数。
これから時間の経過と共に増えるのだろうな。
「ねぇ。神官ライオネル様が居たら話をしたいんだよね。」
叫んで声を掛ける。言葉は通じる前提。
俺の先祖は、この世界で言語を学ばなかったから。
「そちらの名を告げよ!」
当然か。
「俺の名前は、田中 地球(たなか そら)。聖女様の子孫だ。ライオネル様は、俺を知らないかもしれないけどね。」
聖女様を語るのは、命懸け。
ライオネル様がいないとか、聖女とはなんだと言われたら終わりだな。
遠巻きに取り囲んだ人垣。そこを割って登場した騎士。
もしかして。
「あんた、もしかしてフリック様?」
「そうだ、お前を王城まで案内するよう命を受けた。」
設定どおり、乱暴な物言い。楽しめそうだな。
騎士フリックの監視の元、馬車に乗せられて移動する道中。
「ねぇねぇ、聖女リセは知ってる?」
「……リセ様は一度だけ、召喚で来られた聖女様だな。その子孫なのか?」
お、意味深な表情。
一度だけ。その意味も気になるけれど。
「うん、この世界を舞台にしたゲームを作ったんだよ。異世界召喚。そう聞いていたけれど。なんてことはない。選んだ時代の地球人を、宇宙船で誘拐していたんだ。君たちの星の人間が。」
俺は足を組み、フリックがどう答えるのか観察する。
「リセ様は、俺にとって唯一の聖女様だ。帰りたいと泣かれ、それでも役目を全うしようとされた。子孫のあなたにとっては、一歩間違えば存在を消され、未来を失う事態。腹立ちや怒りは当然。」
頭を下げ、謝罪を述べるフリック。
ゲームだと脳筋タイプ。思ったより感情的にならないのだと、意外だった。
「そ。君にとって、唯一と言われる聖女ね。最高の誉め言葉だ。ありがとう。来て良かったよ。他の人にも会いたいんだ。」
そう告げた俺に、悲しそうな表情。
「え、何。幽閉されちゃう感じ?俺、誰にも会わずに裁判的な死刑とか?」
「いえ、丁重な御もてなしを。ただ。この世界は、世紀末なのです。」
「あぁ、魔王復活するあれか。けど、倒す星形のアイテムがあれば簡単なんじゃ。あ、これはネタバレ?知らない情報なの?」
思わず口を手で押さえ。馬車の中なのに、周りを見てしまう。