『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


私の役目が何か。そう考えながら生きてきたけれど。
この世界に来なければ出会わなかった人。その人との未来を繋ぐ。
それを役目と考えてもいいだろうか。
「レジェス先生、私は。」
「マリー、来なさい。見せたいものがあります。」
連れられて向かったのは、学園の地下。
螺旋階段を随分歩いた先。そこには女神レイラリュシエンヌ様の像と。
「隣は天使、リューテサッセウス様だ。」
天使。像は穏やかに微笑み、女神レイラリュシエンヌ様と並んで。
仲睦まじく見える。けれど。その名は。
これが何を意味するのか。
「驚いているね。きっと君の情報にはないだろう。この世界レティッシラは、お二方の加護で守られていたのです。天界で天使の反逆が起きました。天の使いの役割は、人間には理解も及ばない神の領域。まして反逆の経緯など。天の使いも子を産み、家族を構成するのでしょう。反逆した一族、その一人がリューテサッセウス様。番(つがい)、レイラリュシエンヌ様は反逆かリューテサッセウス様を裁く側になるか迫られました。天界を追われ、この世界に転生し。」
転生?レイラリュシエンヌ様が、この世界に。
驚いたけれど、口を閉ざしていた。
ゲームにはない設定。情報に。私はただ茫然とする。
「リューテサッセウス様を、今も探しているのです。それが歴史として繰り返され。魔王の復活と討伐。」
前回の記録も、偶然発見されるくらいの年月。
復活とは。何故、繰り返すのか。
神の領域。転生。それは。
「何故、私にその話をしたのですか。」
「……今回も失敗した。それでも、私の気持ちに嘘がないのだと。マリー……真理、あなたに知って欲しかった。」
今回も失敗した?何を言っているのかわからない。
けれど、私に告げてくれたこと。
重要な事を隠さず、私がこの世界にいる意味を見出したようで。救われる。
「レジェス先生、私はあなたと生きたい。もし死ぬなら、あなたの為に命を懸ける。」
「いいえ、残念ながら。共に死ねない。死ぬのは私だけです。今回は。……最後に、一度だけ。先生をつけずに呼んで欲しい。」
最後?まるでお別れみたいな。
私は首を横に振って、目を閉じた。
頬に優しく手が添えられ。目を上げると。優しい額へのキス。
「レジェス。私は、あなたが好きだった。ゲームの中のあなた。でも今は、憧れ以上の感情がある。共に死ぬ事も出来ないなら、私は命を自ら断つわ。」
「駄目だよ、出来ないように魔法を掛けた。生きて。今回は。」