私は監視対象なのか、寮に入り学園生活を強いられた。
ここにいる意味。そんなの私が知りたい。
来たくて来たわけじゃない。
本当に?ラノベを夢見た。異世界転生。異世界転移。冒険にチート。
転移者になれた事、ここに来られた事が嬉しかった。
けれど現実は違う。
もし転移が私の能力であれば、望めば帰れるはず。
どんなに願っただろうか。
本当は分かっている。これはゲームではない現実。
では、誰が?
『女神レイラリュシエンヌ様の加護を受けし者が世界を救う』。
私には加護がない。
それどころか、秩序を乱したかもしれない。
勇者の年齢が違う。神官見習いのライオネル様。
レジェス先生は設定でいけば、年齢が近いのだろうけど。
勇者ジークハルトは、私と同じ15。学園に通える年齢。
それなのに。まだ勇者として発見されず、任命も受けず。入学のチャンスは流れた。
聖女は召喚される。秘匿された情報。それはいつ?
私は、聖女適性の検査結果が出たと呼び出され。神殿に向かう。
聖女ではないと、レジェス先生に言われてしまったのに。今更。
「適性があることが判明しました。さて、あなたは火を怖がるそうですね。過去、初心者の森に火災が生じたのですが。それはあなたが原因ですか?」
「ごめんなさい、転移したばかりで。魔法が使えるのだと思うと嬉しくて。向こうの世界で知った知識を、軽い気持ちで試しました。」
「そうですか。幸い、誰も被害に遭いませんでした。レジェスが実習で、近くに居たのですよ。倒れたあなたを救護したのは彼です。」
レジェス先生が。
あの火災で誰も被害がなかった。
考えもしなかった。あの炎で、自分が死ぬかもしれない恐怖で。
誰かが死ぬなんて思いもしなかった。
「適性がある?でも聖女様は召喚されるのでしょう?私ではない。」
「それを決めるのは、女神レイラリュシエンヌ様です。」
私が聖女に相応しくないのは明らか。
転移に浮かれ、安易に森の中で火の魔法を使い。制御も出来ず。
対処もせずに気を失った。
それから火の魔法を使うのが怖い。
周辺の木を一瞬で覆い尽くしたように、自分もそうなるのではないかと。
「来なさい、制御を教えます。応用すれば、あなたの防御魔法は聖法として結界を施せるでしょう。」
いつからいたのか、レジェス先生が扉の前に立ち。
私を呼び、待つこともせずに背を向ける。
あぁ、推しに嫌われてしまった。
私に出来る事。
